地域住民と外部支援者とによる手づくりの地域活性化(福島県三島町)NPO法人わくわく奥会津.com|地域活性化100

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地域住民と外部支援者とによる手づくりの地域活性化
NPO法人わくわく奥会津.com
福島県三島町

福島県三島町の地域の概要

福島県三島町は郡山市から車で2時間の所にあり、冬期は積雪が3mにも及ぶ豪雪地帯である。人口は1,700人。
高齢化率は47%で、隣接する金山町らを含む奥会津地域は、全国有数の高齢化率となっている。本地域は、戦中・
戦後に只見川電源開発が行われ、首都圏に自然エネルギーを提供して戦後復興や高度経済成長を支えてきた。
町では、全国で企業立地や観光振興が急激に進むなか、昭和49年に「ふるさと運動」を掲げて、ふるさとのない
人にふるさとを提供するという姿勢で、昔から伝わる編み組細工や縄文・マタギの生活などをウリに、民泊事業を
積極的に展開してきた。他地域でも都市農村交流が活発されてきたことでライバルが増え、観光客も昔ほどではな
くなったが、毎年6月に開催している工人まつりには、町民ら編み組細工等を行う「工人」が(銘々に)店を開い
て交流を行い、2日間で約1万人が訪れるほどにぎわう。
当法人のある大谷地区は、町中心部から車で約10分にある山里である。旧来、沼田街道・銀山街道として交易
の要衝でもあったが、現在は国道から外れたことで衰退を余儀なくされている。

取り組みの概要:地域住民と外部支援者とによる手づくりの地域活性化

五十嵐氏は、長期にわたる役場勤務の中で、また近年は部下の活動を支えて促す立場であったこともあり、自分
自信で責任を取りつつ、取り組みの結果としてのうれしさやありがとうとの思いを分かち合いながら活性化に向け
た取組を展開したいと考えるに至った。当法人は平成23年5月に設立され、折しも東日本大震災・原発事故によ
る風評被害の只中に、若者がわくわくと心躍る仕事や生活を営んで暮らし続けられるよう、コミュニティビジネス
を生み出せる人材の育成と起業環境の整備を中心に活動を展開している。本地域は、同年7月の豪雨によってJR
只見線が一部不通となっているため、より都市農村交流や観光客のニーズが低下しており、このような若者が定住
し続けられる環境づくりは厳しさを増している。
五十嵐氏は、活動の第一歩として、農家の高齢化と後継者不足により耕作放棄地が増えてきたことに寂しさを覚
え、米の産地でありながら買い取り価格が安いことが原因であることから付加価値をつけて販売することを考えた。
また、耕作放棄地の増加による田畑の荒廃を防ぐため、畑(景観)を守ることを通じた生業を作り出すよう、耕
作放棄地を活用したそばの栽培を促進している。同時に、そばを打つ人も高齢化しつつあることから、地域の伝統
を継承したいとの思いで五十嵐氏自らもそば打ちを習得し、役場で購入した石臼を積極的に活用して、特産品の桐
で製造を始めた桐炭でろ過した水を用いてそばを打っている。
また、地元の米を使って日本酒を作ろうということになり、有機肥料による栽培を行って「奥会津秘話」という
思いを込めた日本酒を製造し、地元住民同士、さらには観光客が酒を酌み交わしながら会津の歴史文化と人情を伝
え、深め、広めている。地元住民から借りて「夢明庵」と名付けた古民家では、整備をして交流拠点として活用し、
週末には、3種類のだし汁とセットにしたそばを地元住民で提供している。
一方で、奥会津地方への交流人口の増加を目指し、かつて会津若松市から只見町を最短距離で結んだ銀山街道
の峠道を活用したロングトレイル事業の取り組みも平成24年より開始した。銀山街道には4つの峠道があり、そ
のうち3つの峠について、NPOが事務局となって地元住民と福島県、町村とが協力し、各峠で道をふさぐ木の根
の撤去やぬかるみの解消などの整備を行
い、峠道の通行を可能にした。平成26
年3月には、3峠の活用に取り組んでき
た住民グループによる「銀山活動を活用
して地域を元気にする会」が発足した。
今後、このような活動を活発化させて、
事業の安定化を図ることが目指されてい
る。そのために、流域の温泉旅館等との
連携を深め旅行業法の資格を取得して観
光客を自ら企画・募集し事業性を高める
方向が目指されている。
また、高齢者向けの配食サービスも、
社会福祉協議会が行う定型的な事業とは
別の事業として確立し、地元で雇用を生
み出しながら相互扶助の精神で取り組ん
でいくことが期待されており、さらに、
地区には店舗もないことから、車に乗れ
ない高齢者に対する食事支援サービスの
展開も視野に入れられている。

インタビュー:五十嵐政人氏(NPO法人わくわく奥会津.com理事長)「若い人たちが「わくわく」するような地域にしたい」

若い人たちが「わくわく」するような地域にしたい
五十嵐政人氏
NPO法人わくわく奥会津.com理事長
福島県ならびに奥会津地域では、只見線の一部通行不能化をはじめ、高齢化や人口減少といった様々な地域課題
が発生しており、全てを解決することができるかはわからないが、行政の取り組む事業とは別の視点から、地域の
皆さんから必要とされている、求められている活動を積極的に展開していきたい。
これまで過疎問題と子供らの教育に長く関わってきたが、結果的には人口流出は続き、子どもたちにも「魅力が
ない」とそっぽを向けられるなど無念さがあることから、今後は、若い子たちがわくわくするような地域にしたく、
NPOの名前にも「わくわく」と記した。
リーダーには、住民たちの半歩前に立ち、先導しつつもみんなの背中を押して取り組んでいく形が望まれると考
える。このため、住民を巻き込みながら各種取り組みを展開するようにしており、「ちょっと手伝ってほしい」「一
緒にこれをやろう」という肌感覚で、住民同士で協力して取り組み続けられる地域を目指している。
また、地域の活性化には、外からの情報や価値観を伝える「風人間」と、地域に根付いて着実に取組みを行う「土
人間」が必要である。取り組みを展開する上で地域内だけでは知識や経験が不足しているが、これまでの活動を通
して培ってきた全国各地で取り組みを行う人とのネットワークを活用するため、地域外に情報発信と呼びかけを行
い、地域の活性化に向けて共同で事業を展開する方向で取り組んでいる。このように双方の力があって「風土」が
根付くものであり、そのためには顔の見える交流関係が不可欠である。
観光客を多く呼び込み、地域住民、特に高齢者を喜ばせたいと思うが、地域のことを理解して、心から交流でき
る人たちと深くつながりを作り、保ち、活動を展開していきたい。