「民泊」で島の新しい基幹産業をつくる(沖縄県伊江村)一般社団法人伊江島観光協会|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域に人を呼ぶ>「交流」で人を呼ぶ
「民泊」で島の新しい基幹産業をつくる
一般社団法人伊江島観光協会
沖縄県伊江村

沖縄県伊江村の地域の概要

沖縄県国頭郡伊江村は沖縄本島の本部港からフェリーを使えば30分という距離にある1島1村の離島である。
平成22年時点の人口は約4,700人。村の中に高校がないために島の子供達の多くは中学校を卒業後に、沖縄本島
の高校に通うために島を出てしまうため、若年層の人口減少も進行している。
主な産業は葉タバコ、電照菊、和牛、島らっきょう等の農業と、ソデイカ漁等の漁業である。しかし、農業や漁
業も最近は縮小傾向にあり、主要な葉タバコや電照菊などの生産量は最盛期に比べて半減している。そのため、近
年の島の経済は政府の公共事業によって成り立っていたが、公共事業の縮小が進む中で、新たな産業の創出が求め
られていた。沖縄本島からフェリーで30分という距離にあるため、「日帰りで行ける離島」として観光客に人気
があったが、その近さが災いして、多くの観光客が宿泊することなく帰ってしまうために、観光による島への経済
が少ないことが課題であった。

取り組みの概要:「民泊」で島の新しい基幹産業をつくる

伊江島では平成15年から、島全体で協力をして修学旅行の学生たちを受け入れ、一般の民家に宿泊させる「民泊」
や、漁協や農協が協力をしての「体験プログラム」などを提供している。多くの学校が来島し、家業体験や郷土料
理を食べるなど島民との交流をしている。
現在、島内には280件ほど民泊受け入れ先があり年間に合計300校以上、約57,000人が民泊に来ている。村
の人口の10倍を超える人数が来島することによって、民泊の宿泊料金(1泊3食付9,500円)による直接的な収
入のほかに、食材の購入などに地域の店舗も潤うようになっており、島全体に大きな経済効果を生んでいる。また、
民泊を通して外部との交流が生まれたことで、伊江島の認知度が全国的に向上し様々な効果を生んでいる。
伊江島で民泊が行われるようになったのは平成15年。本土の学校から「沖縄の文化や生活に触れられる修学旅
行にしたい」という要望を受けた旅行会社から「民泊」を提案されたことが発端である。最初はテストとして大阪
の中学校の修学旅行生の受け入れを行うことになり、観光協会から島民に依頼をしてなんとか30軒の受け入れ先
を確保した。しかし、このテストは失敗に終わる。やってきた中学生の中には宿泊先での悪戯や、深夜外出など、
当時の島の常識からは考えられないような子供たちだったからだ。このテスト民泊終了後の反省会で、住民たちか
らは民泊に対する不満や反対意見が噴出したが、観光協会が説得を行い、3校目までテストを行うこととなった。
その後に島を訪れた2校の子供達は島の住民たちとの相性もよく、無事にテストを終えた。
テスト終了後の受け入れ民家の反応は、民泊の存続についての反応はまちまちで、民泊を積極的に続けていくこ
とに好意的な民家は10軒ほどであったが、嬉しい誤算もあった。受け入れ民家が民泊に来ている子供達の食料を
調達するために、島内の食料品店等にも大きな経済効果があるということだった。その後、民泊が島にもたらす経
済効果に大きな期待を抱いた。
民泊を事業として行うためには、多くの学生を常に受け入れることができる体制を整える必要があるが、民家の
協力が得られないことがネックとなった。観光協会では、民泊が島に与える経済効果等をまとめて村に協力を依頼、
同時に民泊に来た生徒に伊江島独自の体験プログラムを提供するために農協、漁協、商工会への協力を求めた。結
果、島を挙げて民泊に取り組むこととなった。
伊江島の民泊にはいくつかの特徴がある。
人と人とのつながりを大切にする「ヒューマン
ツーリズム」である。民泊に来る生徒たちを決し
てお客様扱いすることはしないと決め、本当の家
族のように接することを大切にしている。
また、民泊が提供する食事や体験内容について、
統一化した厳密なルール等は設けていない。原則、
受け入れをする民家の家業や考え方によって全て
異なっているが、あえて画一化しないことで、そ
れぞれの受け入れ民家の良さを最大限に活かして
もらおうという工夫である。
一方で、安全に関する指導等は徹底している。
民泊を受け入れる民家は、受け入れ前に事前打ち
合わせを行うことで、受け入れる学校ごとにこと
なる注意点等を共有する。また、受け入れ終了後
には必ず反省会を行い、次回以降の民泊への改善
点等を皆で話し合うようにしている。現在、修
学旅行生を受け入れる民家は280軒にもなるが、
こうした、密な情報を共有することで受け入れ民
家の質を保っている。
民泊を始めて10年ほどになるが、現在では農
協や漁協の協力による体験プログラムも充実して
いる。伊江島の伝統的な漁法である「追い込み漁」
の体験や、伊江島産の海産物を利用して海人と一
緒カレーを作る体験、らっきょうなどの農業体験、
三線体験など、多岐にわたる。
現在、この民泊には年間300校以上、約
57,000人が来るまでに成長しており、島を代表
する産業の一つとなった。その経済効果は島全体
では8億円にもなると言われる。
ここまで成長した民泊事業だが、今後の方向性
としては限られた島の受け入れキャパシティーを
守りながら、無理なく受け入れることで、安全、
安心で質の高い民泊事業を提供することを目指し
ている。

インタビュー:金城盛和氏(会長/一般社団法人伊江島観光協会)

一般社団法人伊江島観光協会
会長
金城盛和氏