県全域の広域連携によるグリーン・ツーリズム(秋田県県内各地)NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会|地域活性化100

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県全域の広域連携によるグリーン・ツーリズム
NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会
秋田県県内各地

秋田県県内各地の地域の概要

秋田県の人口は約109万人(平成22年)であり、昭和30年の約124万人から減少を続けており、高齢化率も
高い。秋田県の農業の特徴として米への依存が高いということがある。平成24年の農業産出額は1,877億円と全
国19位だが、米の生産量は52万tと全国3位であり、農業産出額の64%を米が占めている。近年、米価の低下
等が問題になっており、米に依存する構造を変えるために野菜の生産拡大等が行われている。
また、秋田県は地域ごとの伝統文化・芸能が色濃く残っていることも特徴であり、個性に富んだ祭りや食が豊富
にある。有名なものには、東北三大祭りの一つである「竿燈まつり」、男鹿半島の「なまはげ」などがある。食に
おいては、きりたんぽや全国的にも有名な数々の銘酒のほか、豊かな自然環境の中で生産される野菜類や、比内地
鶏、独特の魚食など。地域色豊かな食文化がある。

取り組みの概要:県全域の広域連携によるグリーン・ツーリズム

「NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会」(以下、協議会)は、行政区の枠を超えて、秋田県
内全域で都市農村交流やグリーン・ツーリズム活動を推進する事業を行っている。平成11年に秋田県や一部市町
村によるグリーン・ツーリズムの普及を目的とした「協議会」として設立され、平成24年には活動の幅の広がり
を受けてNPO法人化された。
現在は県内各地に60件以上の農林漁家民宿・農家レストラン、8件の直売所などの連携のハブとして、県や市
町村との連携をしながら、活動の支援をする事務局的役割と、グリーン・ツーリズム推進を担う。
平成26年時点の正会員・賛助会員は154会員で、正会員は農林漁家民宿経営者、農林漁家レストラン経営者が
60会員、体験受入事業者が5会員、地域協議会が8会員、農産物等直売所等8会員、グリーン・ツーリズム推進
団体等が2会員と、加えて17の市町村と秋田県も参加をしている点が特徴である。このほか、活動を支援する賛
助会員として、法人・団体11会員、個人で43名がいる。
理事長には農家民宿を営む藤井さんが、理事には大館市、仙北市、羽後町の首長らや県職員も名を連ねている。
広域かつ、官民連携によってグリーン・ツーリズムに取り組んでいる。(※協議会の運営には会費が充てられており、
受入れを行う団体・個人が5,000円、市から20万円、町村から10万円、県約80万円を支出されている)
こうした協議会が立ち上がった背景には、多くが米のみを作っている秋田の農家を襲った、近年の米価の低下が
あった。農家では、農業以外の収入をつくる必要があったため、グリーン・ツーリズムを農家の収入の第二の柱に
位置付けることとなった。また、地域内の人口減少が進む中で、県や自治体にも交流人口を増やして地域を活性化
したいという想いもあった。さらには、農家の人たちの中には「畑や田んぼと家の往復だけでなく、色々な人と交
流したい」「自分の作った作物を食べる人たちの反応を直接見たい」という思いがあったことも事実であり、農家
民宿を営む理事長の言葉を借りれば「楽しいから始めた」のだという。
活動開始当初は、秋田県と市町村が主体となって、受け入れを行うための人材育成や広報活動に関する研修会を
はじめた。当初、研修会は地域ごとに行われていたが参加者は多くなかった。そのため、地域を超えた情報収集や
交流をすることで参加者を増やすことことを目的として、平成11年に「協議会(現NPO法人の前身の組織)」を
立ち上げて全県で1つに集約した研修会を行うようになった。この研修会が発端となって始まったのが現在も行わ
れている「グリーン・ツーリズム花まるっ大学」である。この「大学」では、農家民宿などのグリーン・ツーリ
ズムを行っている農家への支援と、農家・事業者の新規参入増加を目指してグリーン・ツーリズムの楽しさを伝え
る講座を開講している。「大学」で行うのは、経営手法等の講座ではなく、「グリーン・ツーリズムを実施する農家
側も楽しめなくては、お客様を楽しませることはできない」という考えに基づいて、手を動かしたり、現地を訪れ
たりする体験型の講座によって、グリーン・ツーリズムを学ぶ機会を提供している。こうした講座内容は講習参加
のモチベーションへも繋がっている。
また、新規開業者とすでに実践している農家・事業者では、抱える問題も異なっているために、すでに農家民宿
等を実施している農家のみが交流する「実践者連絡会議」も年1回開催している。他にも、活動をしていく中で
発生する問題点や悩みを、気軽に相談できる機会も提供している。相談員には県の普及指導員(元県職員)が対応
しており、実施農家の負担を減らすことに力を入れている。「大学」の参加者は当初40名ほどであったが、多い
時には100名を超えるまでになっており、地域内でのグリーン・ツーリズムへの関心が高まっていることがわかる。
最近では、行政職員らの参加も増えている。
もう一つの活動に県や市町村と協力しながらの県内グリーン・ツーリズムネットワークの構築や広報活動事業が
あり、秋田のグリーン・ツーリズムの情報をまとめたWEBサイト「美の国秋田・桃源郷をゆく」の運営や広報物
作成のほか、県内外で行われる研修や会議、講演会等への派遣事業も行っている。
このように、行政区の枠を超えた広域連携による協議会(NPO法人)を設立した効果は大きかった。各自治体
で行えば、外部から見た時には同じ秋田県内のグリーン・ツーリズムであっても、市町村ごとに実施や広報の方法
も異なり、お客様にとっても不便である。また、必ずしもすべての地自体で成功するとは限らないないため、県全
体としてグリーン・ツーリズムの機運を盛り上げていくことが難しくなる可能性もある。内部的には秋田県内全域
の活動を一括して支える組織として、また、外からは秋田のグリーン・ツーリズムのことなら「花まるっ」という
「大きな窓口」として、協議会の存在は大きい。
また、自治体そのものが主導するのではなく、官民連携のNPOという形態も大きな効果を生んでいる。自治体
で立ち上げの支援は出来ても、その後の個々の経営を支援するまでは難しい。NPOであれば、開業後のフォロー、
広報活動、仲間作り等、農家だけの力では難しい部分を担うことができる。柔軟な組織を生かして、受け入れ農家
に対するきめ細やかなフォローを行っている点も大きな特徴である。
こうした効果もあり、最近では活動内容も多様化している。例えば、若い農家の中には、農家カフェを開いた
り、ライブなどのイベントを開催するなど、新しい取り組みに挑戦している人もいる。今後は、活動を通して農林
漁村の更なる活性化に繋がる事業や、アグリビジネスを行おうという企業の支援を行うなど、地域の農林水産業を
活性化させるための活動をさらに促進したいとしている。しかし、一方で課題もある。現在、これだけの活動であ
りながら、協議会で実務を行う専属職員は2名のみであり体制としては不十分である。今後は、各地域から協議
会運営に携わることのできるキーマンを育成することで、体制の整備を目指している。現在、グリーン・ツーリズ
ムが県内の観光産業に占める金額は決して大きくはないが、様々な体験を通して秋田の魅力を伝えることができる
グリーン・ツーリズムには、お金で量れない効果を生み出している。

インタビュー:藤井けい子氏・藤原絹子氏(理事長&事務局長/NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会)

NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会
理事長&事務局長
藤井けい子氏・藤原絹子氏