NPOと株式会社の中間。地域住民運営による地域密着企業(島根県雲南市)株式会社吉田ふるさと村|地域活性化100

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NPOと株式会社の中間。地域住民運営による地域密着企業
株式会社吉田ふるさと村
島根県雲南市

島根県雲南市の地域の概要

広島県に近い中国山地の山村である吉田村(平成16年に雲南市に合併)は、かつては薪炭や製材などの林業が
盛んであったが、エネルギー転換や低価格の外国山材の輸入といった産業構造の変化とともに、林業で生計を立て
ることが困難になり、昭和30年代後半から人口流出が進む。最盛期には5,000人ほどいた人口が、昭和60年に
は2,800人にまで減少。「このままでは村がなくなってしまう」との危機感を感じた村民は、地域の雇用の場の創
出と地域経済の活性化を目的に、自治体(当時の吉田村)と地域住民が共同で出資をする第三セクターとして株式
会社吉田ふるさと村を設立する。“地域に根ざした、地域に求められていることを担う”会社として、地元農産物
を主原料とした加工食品の開発製造販売を主軸に、農業、地域住民の足となる雲南市民バスの運転業務、水道事
業、温泉宿泊施設の経営、第三種旅行業、たまごかけごはん専門店「飯匠お玉はん」の経営と多様な事業を展開し、
地域づくり総務大臣表彰をはじめ多くの賞を受賞。地域活性化事例として全国の注目を集めている。

取り組みの概要:NPOと株式会社の中間。地域住民運営による地域密着企業

昭和60年に、過疎化を防ぐために皆が働ける場所を作る必要があるとの考えのもと、株式会社吉田ふるさと村
を設立する。全ての村民に株主になってほしいとの思いから、村内全戸に設立趣意書を配布したり説明会を開催し、
株主を募る。その結果、村内の24歳の若者から85歳のお年寄りまでの109人の村民から、「村を何とかしてほしい」
との熱い気持ちが込められた2,750万円の出資をいただく(出資者は129名)ことにつながる。
現在の活動は、食品加工が主で売上の半分ほどを占める。その他、建設・水道事業・バス事業・温泉・飲食・観
光事業など多様な事業展開を行っているが、初期に始めたのは水道事業であった。村で一番困っていることを考え
た際に、水道の問題があった。村内には水道工事の業者が存在せず、水道が破損した際には、何キロも離れた業者
に頼む必要があり、その間、何日間も断水するということも度々あった。そこで、一人ではじめた水道事業は従業
員4名となり、一時期は会社の売上の約半分を占める採算事業となった。過去には、村民が交流するための喫茶
店やタクシーなどの事業も行った。これら事業の採算は低かったが、村民の生活向上には大きく寄与する事業であっ
たとともに、村民の求めることをやる、事業の多角化の経営方針を方向付けるものとなった。
吉田ふるさと村の名が、全国に広まることになったのは、今や吉田ふるさと村の主力商品の一つとなっている、
たまごかけごはん専用醤油「おたまはん」である。世界初の商品としてそのユニークなコンセプトとネーミングで
一躍ヒット商品となり、世に卵かけご飯ブーム、そして、専用調味料ブームを巻き起こした。また、平成22年には、
こだわりのご飯と卵、そして、ユニークなトッピングで卵かけご飯を食べていただくことを目的に、たまごかけご
はん専門店「飯匠お玉はん」を開店。平成24年には「飯匠お玉はん」が、従来の「卵かけご飯」のほかに洋風
のメニューをカフェスタイルで提供する「~UnnanOtamaCafé~おたまはん」としてリニューアルオープン(※
した。
同様に、都市との交流人口の拡大による活性化と定住化を目的として、第3種旅行業に登録し、観光ツアーの
販売や、ネットによる通販等を見据えて、広報部を設立するなど、地域のニーズと社会に潮流に合わせた事業展開
を進めている。
(※現在、「飯匠お玉はん」は暖簾分けを行った。)
地域の雇用確保を目的で、6名でスタートした吉田ふるさと村の売上は設立当時の10倍に、また、従業員数も
約70名と増加している。その多くは地元の住民だが、近年は都会や近隣市町村からの若者の就業も増加している。
地域を愛し、地域に貢献したいとの思いを強く持つスタッフの活躍が、たまごかけごはん専用醤油「おたまはん」
のアイデアや、農業や旅行事業といった新たなチャレンジと地域の活性化につながっている。

インタビュー:高岡裕司氏(株式会社吉田ふるさと村代表取締役社長)「目指すのは、NPOと株式会社の中間の、地域住民の運営による地域に根差した企業。」

目指すのは、NPOと株式会社の中間の、地域住民の運営による地域に根差した企業。
高岡裕司氏
株式会社吉田ふるさと村代表取締役社長
地域で求められることは常にやる方向性で考える。会社設立の目的は、地域の雇用創出とか地域活性であるが、
地域で求められることは、常にやっていくという経営方針で事業の多様化を図ってきた。取り組んできた事業の中
には、採算面で失敗したものもある。しかし、村民から求められて、村民のために行った事業は、村民の心の活性
や生活向上には大きく寄与したであろう。常に、地域で求められていることは何かといった、住民目線で事業化し
ていくことが、地域で愛され、頼りにされる企業につながっていく。
目指すのは、NPOと株式会社の中間の、地域住民の運営による地域に根差した企業である。地域の課題、ニー
ズを吸い上げ、それにこたえる商品を形にしていくのが我々の役割である。決して、利益追求でもなく、ボランティ
ア(非営利)でもない。半官半民の意識をもったマネジメントをする、地域の規模に即した、地域に貢献する会社
を目指していく。
行政と民間(地域住民)が出資する第3セクターであるが、行政にはいっさい面倒はかけないという約束で始めた。
そのため行政からの出向は一切ない、民間(地域住民)が主体の会社である。そのため、現在でも地域住民の多く
が吉田ふるさと村の株を所有しており、吉田ふるさと村の活動に対して、積極的に関与している。