離島における課題の解決に自ら取り組むNPO(岡山県笠岡市)NPO法人かさおか島づくり海社|地域活性化100

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離島における課題の解決に自ら取り組むNPO
NPO法人かさおか島づくり海社
岡山県笠岡市

岡山県笠岡市の地域の概要

笠岡諸島は、岡山県笠岡市笠岡港から7km~15kmの沖に30有余の豊かな自然に恵まれた島々から成る。こ
のうち7つの島(北から、高島、白石島、北木島、真鍋島、大飛島、小飛島、六島)で生活が営まれており、人
口規模は約30人~約900人と大きく異なる中、石材業と漁業が盛んな北木島、海上貿易の拠点であった真鍋島、
海水浴場や白石踊りで有名な白石島が大きな島となっている。
石材業や漁業、海運業が島の生活を支えてきたが、本土への移転や産業構造の変化により各島の産業は低迷し、
人口減少と高齢化が進んでいる。近年もその流れは止まらず、航路・航路事業者の統廃合や小学校廃校、市の独自
策として始めた「デイサービスを運ぶ船」である「夢ウエル丸」のサービス停止など、行政サービス・生活サービ
スも縮小しつつある。

取り組みの概要:離島における課題の解決に自ら取り組むNPO

地域活性化の本格的な取り組みは、平成8年の笠岡市役所による「ゲ
ンキ笠岡まちづくり支援事業」から始まる。各島から展開すべき取組が
提案されて取り組んだ後、島同士で交流・連携を深めるため、平成10
年には「島の大運動会」を開催し、現在までほぼ毎年開催している。
7つの離島で連携する理由は、人口減少が進む中で各島において病院や
学校などの施設を運営することが困難となりつつある中で、すべてを1
つの島や本土に集約してしまうのではなく、各々を各島で受け持つこと
で、笠岡諸島全体の活性化・維持につながると考えられたことにある。
平成14年には、島同士で連携を深めて島の内外に観光や福祉、イベン
トなどの情報を発信すべく、電脳笠岡ふるさと島づくり海社を設立し、
さらに活動を発展させた。
医者がいなくなって困る北木島では自ら移住してくれる医者を探して診
療所を開設し、真鍋島には看護婦を呼び寄せて常駐いただいた。増加す
る空家に関しては空家対策事業を展開し、今や全国各地で課題となりつ
つある空家であるが、なかなか手放さない島民に対して一人一人住宅の
提供の必要性を伝えて提供してもらうことで、44世帯・70人の移住に
つなぐことができた。
高齢化に伴って移動が困難な人が増える中、移動支援事業の展開に
あたっては許認可の関係から任意団体では運営できないことから、自
らNPO法人格を取得して、平成18年に過疎地有償運送事業を始めた。
また、介護問題に関しても、行政の手が行き届かない状況に対して自ら
介護保険事業をスタートするために、メンバーに猛勉強してもらって資
格を取得してもらい、事業着手にこぎつけた。
NPOでは、島民の生活の安定・生活サービスの維持のみならず、雇
用の維持・拡大にも熱心に取り組んでいる。各島において各々の特産
品で作った「しまべん」の開発や、島のアンテナショップ「ゆめポー
ト」の設置、三宅島の火山灰を用いて魚介類を干すことで臭みを取り
除いて商品化した「灰干し」など、各種取組が展開されている。
以上の取組を通して、島民が島民のために生活サービスを展開する
ことでNPOのスタッフは徐々に増え、現在は49人にまで増加して
いる。また、移住した人たちが有する専門知識やネットワークなども
活用し、サービスの高度化や特産品販売店の運営など、新たな取り組
みが生まれている。

インタビュー:鳴本浩二氏(NPO法人かさおか島づくり海社理事長)「常に創造力を発揮して、あきらめないで取り組んでみる」

常に創造力を発揮して、あきらめないで取り組んでみる
鳴本浩二氏
NPO法人かさおか島づくり海社理事長
笠岡諸島の港、町並み、農地
▼リーダーの思い:子どもの頃、島では青年団活動が非常に盛んで魅力的であり、高校にも進学しないで活動に参
加したいほどであった。高校卒業後、島に戻り親と石材業を営みながら活動を展開してきた。当時、男性の仕事は
あっても女性の仕事はなく、自然と女性は離れていくものだった中、出ていかないようにお見合いツアーをして数
組のカップルが成立したこともある。周りから「行動力や野心のある人は島を離れ、やる気のない人が島に残って
いる」と言われるのが悔しく、平成元年に、島で若い人の雇用を増やそうとの思いで自ら会社を立ち上げて20人
を雇って石の加工を行い、「人間再生工場」とも言われたこともあるほどであったが、それほどまで人材が重要だ
と考えて取り組んできた。高齢者についても、島を離れて引き取られていくと1年程度で亡くなる例が散見され
ることから、島内に残り、慣れ親しんだ環境の中で、仕事に従事しながら暮らしていくことが重要と考える。
島には、困っている人や地域としてやってほしいことが山積している。何でも取り組んで助けることは大切であ
るが、それを“仕事”にしていくことではじめて持続する形となる。買い物支援も移動支援も然り。「もしかした
ら仕事にできるかもしれない」と思いついたら取り組んでみて仕組みを構築し、若者などに雇用として定着させて
いく形で取り組んできている。
▼パートナー:笠岡市役所の職員とともに島の活性化に取り組んできたことが大きい。現在も、行政との役割分担
のうえで協働して各種事業に取り組んでいる。また、島外からのIターン者や全国的なネットワークなど、外部の
人材や知恵を活用することで、効率的かつ高度な事業に取り組むことができる。医者を島外から呼んできたように、
島民でカバーできなければ島外と連携しなければならない。
▼リーダーの悩み:島内には、まだまだ活動を理解してくれない人もいる。しかしこれに対しては、リーダーは周
りから足を引っ張られるものだ、と割り切って取り組むしかない。また、人口が大幅に減少した中では、リーダー
の選び方について再検討する必要があると感じている。島からの議員の輩出など、改めて考えて提案・行動をして
いきたい。各種取組を展開して全国的にもネットワークができる中で、人材を見つけることは容易となってきたが、
育成することは非常に難しい。その分、やりがいがあるが、より多くの人材を育成していくことが島の将来につな
がる。
▼取組にあたってのポイント:「失敗しないこと」が重要である。
いろいろと取り組んでみても、挫折したり、うまくいかなかったり、と全てが軌道に乗るものばかりではない。
しかし、そのようなときには一旦手を止めて寝かしておくことが重要で、何年後かに環境の変化やネットワークの
拡大によって状況が好転し、急に進展することもある。常に地域が必要としていることにしくみを作って着手し、
常に創造力を発揮して、あきらめないで取り組んでみることが重要である。