女性の活躍に端緒する地区を支える総合的な取組み(広島県安芸高田市)川根振興協議会|地域活性化100

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女性の活躍に端緒する地区を支える総合的な取組み
川根振興協議会
広島県安芸高田市

広島県安芸高田市の地域の概要

安芸高田市は広島県の中北部に位置する約31,000人の町。その最北端に位置する川根地域は、人口490人(223
世帯)、高齢化率は44.7%の中山間地である(人口・世帯数・高齢化率は平成26年3月末時点)。昭和40年代の
高度成長期から人口が流出していく中、昭和47年7月に起こった未曽有の大洪水により川根地域は壊滅的な災害
を受け、陸の孤島と化したことが、更なる過疎化に拍車を掛ける。「自分らにできることは自分らの手で」をテーマに、
同年、住民組織として「川根振興協議会」を立ち上げる。地域の将来構想図「川根夢ろまん宣言」を作成し、ここ
に描かれたことを1つずつ実現する形で、交流事業(エコミュージアム)・福祉事業(一人一日一円募金)・定住
施策(お好み住宅)・農協撤退を受け商業施設(万屋)、ガソリンスタンド(油屋)の運営、特産品の開発、さらに
は交通事業(かわねもやい便)など広範な活動を展開している。地域活性の担い手は、行政でも、都市の企業でも
なく、地域コミュニティの総合体である地域自主組織であるとの考えのもと、住民による地域経営を実践している
先進事例である。

取り組みの概要:女性の活躍に端緒する地区を支える総合的な取組み

川根振興協議会の設立からしばらくの主たる活動は、行政への要望を行うことであった。「地域振興懇談会」と
いう名で、町と町民とが本音で話し合える場を作ろうとしたが、役場の職員が文章で回答を持って来て答弁を行う
といった会議でしかなかった。役場の職員に地域住民が詰め寄ったところ、職員から「じゃあそちらはなにをして
いるのか」と切り返され、何もしていないことに気づく。このままでは振興協議会が圧力団体となり、懇談会が「駄
目人間を作る場」になってしまうと危惧し、振興協議会の役割の見直しを行う。振興協議会は、地域の問題を精査し、
解決に向けて自ら取り組みを行う場。その上で、自分達(地域)ができることは自分達で、行政でしかできないこ
とは行政に提案していくことが大切であると考える。行政に頼ってばかりだと自分達で発想することがなくなって
しまう。職員に要求するのではなく、身近ら提案していくという現在の地域運営の形にたどり着くのにかなりの時
間がかかった。このような意識改革のもと、「これ以上、地域が寂れないように」という守りの活動から、「地域活
性化のための、攻めの活動を展開していく。ここから、「川根振興協議会」の自分達の手による攻めのまちづくり
がはじまる。主な以下のような取り組みを行っている。
▼エコミュージアム川根
廃校となった中学校の跡地活用について、施設整備の企画段階から振興会が関わり、施設規模や管理運営などに
ついて協議を行う。1992年、行政と住民が出資740万円で運営する研修宿泊施設「エコミュージアム川根」には、
年間4,000人を超える人が訪れる。レストランや会議ができるホールも設置されており、レストランは地元の女
性達で運営され、地元の川魚や季節の食材を使った様々な料理を提供している。
▼万屋(よろずや)と油屋(あぶらや)の営業
川根唯一の食品・生活雑貨店とガソリンスタンドを農協が経営していたが、農協が川根地域から撤退することを
決定し、地域内から唯一の商業施設がなくなることになった。これにより、地域住民は12kmも離れた店舗に買
い物に出かけなくてはいけなくなり、交通手段の乏しい高齢者にとっては、生活する上で、非常に大きな問題であっ
た。こういった問題に対して、川根振興協議会では高齢者福祉の立場から店舗を引き継いでいくことを決定する。
農協から施設を譲り受け、1999年から経営に乗り出す。店舗を「万屋よろずや」、ガソリンスタンドを「油屋あ
ぶらや」と名付け、地区住民に1戸当たり1,000円の出資をお願いし、全戸からの出資を得る。現在は、住民が
積極的に店舗を利用するようになってきているとともに、福祉サービ
スの一環として高齢者のための宅配事業も実施している。
▼一人一日一円募金
川根で生まれ育った者は一日一円募金をするというルールを地区で
定め、各家庭・事業所には募金を入れる竹筒が置かれており、募金さ
れたお金は高齢者への配食サービスの原資として活用されている。こ
ういった高齢者配食サービスが単身世帯の高齢者に声かけ、また、小
学生と高齢者の文通等、地域内の人間関係の形成にもつながっている。
▼かわねもやい便の運行
平成21年10月から、地域住民の生活実態に合わせた交通便(市
町村運営有償運送事業、かわねもやい便)をスタートする。これまで
の公共交通(バス)を見直し、市から運行・予約受付業務の委託を受
け、地域住民の運転・運営による誰もが気軽に、目的に応じた利用が
できる交通体系に移行した。通勤・通学をはじめ、市中心部への運行
など、利用者の利便性向上と高齢者に配慮した運行を目指している。
▼お好み住宅で地域の担い手づくり
人口減少と高齢化が進む地域で、地元で生まれた人だけを頼りにし
て生活をしていくことはできない。そこで、まちづくりの担い手をつ
くるために振興協議会は、行政と連携して、「お好み住宅」という借
家制度を設けている。他の公営住宅と違い、入居者が自分の好みで
間取りを自由に設計できるという特徴がある。平成21年度末で累計
23棟が完成し、70人以上が暮らしている。この住宅は、川根に移住
してコミュニティに入ることが入居の条件となっており会長が面接す
る。平成26年度の小学校の児童数は26人だが、その約半数がお好
み住宅から通っており、この住宅のおかげで、小学校が存続している
とともに、将来のまちづくりの担い手の育成につながっている。

インタビュー:辻駒健二氏(川根振興協議会会長)「「行政が何もしてくれない」でなく「住民として何をしたか」」

「行政が何もしてくれない」でなく「住民として何をしたか」
辻駒健二氏
川根振興協議会会長
心の過疎が一番ダメ。人口減少、少子・高齢化が進む地域にとって一番ダメなのは、住民の自らの地域に対するあきらめ
である。「この地域はもうだめだ。」、「昔は〇〇だった、昔は良かった。」といった心の過疎が一番だめ。川根地区もはじめは「何
もない」地域であった。それが、川根には「自然」があるという風に意識が変わってきた。
地域づくりの取組を進めるにあって、地域住民の様々な要望やアイデアを、「夢」「浪漫」という形で、住民が共有できる
構想づくりを行い、その1つ1つを実現・成功していく体験の共有が、次の新たな取組につながっていった。
地域経営の視点をもつ住民組織の構築が求められる。地域づくりを考える場合、「行政が何もしてくれない」でなく、「住
民として何かしたか?」という意識改革が必要である。地域がやらなきゃ、地域がもたない。振興協議会では、福祉や教育
など、儲けにはつながらない色々なことに取り組んでいる。役員もしょっちゅう集まり、単身高齢者への声がけ・宅配もす
べて無報酬でやっている。過疎・高齢化が進む過疎地域でみんなが生きていくためには、何事も地域として取り組まないと
いけない。川根の場合、地域が有する自然、歴史や文化を、住民の手で活用していくという考えを持つことができた。その
ため取組を行うにあって、住民が資金を出し合って、地域に必要なサービスや、必要な事業を展開していく、自分らができ
ることは自分たちでやる。できないことは行政と協働してやるといった地域経営の視点をもつことができている。