集落一丸。集団営農が地域を救う(大分県宇佐市安心院町)安心院・松本イモリ谷|地域活性化100

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集落一丸。集団営農が地域を救う
安心院・松本イモリ谷
大分県宇佐市安心院町

大分県宇佐市安心院町の地域の概要

松本集落は大分県宇佐市安心院町中央部にあり、四方を山に囲まれた中山間地域である。谷を上から見ると「イ
モリ」の形をしていることから「イモリ谷」と呼ぶようになった。松本川に沿った谷に農家が点在しており現在は
140名54軒が生活している。うち、Iターンで集落にきたものも8軒ある。主たる産業は水稲、大豆、ぶどう栽
培などの農業(農家数31戸(うち専業6戸)、耕地面積水田34ha、果樹等11ha)だが、一つあたりの農地が狭
小であるために効率的な大規模農業は難しい地域である。さらには農作業の機械化が進行し、各農家が小型農機を
利用するようになったことで、集落内における農業の小規模・個別経営化が進んでいた。
かつての松本集落は田舎特有の閉鎖的で固定化された考え方があったため集落内の共同意識が薄く、集落営農等
には程遠い状況であった。そのため、集落住民の協働意識を醸成することや、集落営農などの効率的な農業経営を
集落が協力して行うなどの対策が求められていた。

取り組みの概要:集落一丸。集団営農が地域を救う

松本集落の変化のきっかけは、平成12年に当時の町の転作助成や中山間地域等直接支払制度を利用して集落内
の複数農家が、稲作から大豆に転作をしたことだった。この転作をきっかけとして集落内の農家35軒で「松本営
農組合」を組成。営農組合には機械作業班や栽培管理班等があり、集落内における栽培協定、農作業の受委託、共
同利用農業機械の購入、維持管理等の事業を行っており、まとまった大豆栽培を行うための集落内協働体制を整備
した。平成12年には集落の水田20haの8割にあたる17haに大豆を作付けし、その後は連作障害を避けるために、
農地を分割して隔年ごとに米と大豆を栽培した。生産量は決して多くはなく、10aあたり120kgであるが、良品
質であったため、大分市内の豆腐製造業者との契約栽培・全量買取りが開始された。平成14年には大分市内に集
落のアンテナショップ「豆の力屋」をオープンさせ、集落で生産した野菜、ぶどう、加工品などを販売するように
なり、それまでは市場への出荷ができなかった農産物の直売も可能となった。また、加工品の販路ができたことで
女性たちが中心となって、集落内に5軒の農産物加工所が開設された。平成16年には集落内に直売所「大きな豆
の木」が開店。集落産の大豆を使った納豆の製造販売と地域農産物を始めた。
これらの活動が評価されて、大分県におけるモデル集落に選定され、平成12年には「集落ビジョンづくり研修
会」が開催された。住民たちによる集落の将来ビジョンの話し合いが重ねられ、集落の未来の姿を一枚の地図に描
くなどの検討が行われた結果、それまでは別々に行われていたイベント等の交流活動と農業等の生産活動を一体化
し、活力ある集落の方向性を打ち出すこととなった。
同年には集落住民が集うことのできる拠点として「松本集落営農センター」を建設。この建設には中山間地直接
支払制度の補助に加え、住民からも1戸あたり10万円(5年間)の拠出を募り、文字通り「みんなの公民館」を作っ
た。現在でも集落の集会や各種イベント等に活用されている。
集落内のこうした動きを受けて集落の魅力を対外的に発信する取り組みを行おうと、平成13年にはUIターン
者を含む集落内の若手夫婦30名で任意団体「イモリ谷苦楽分(くらぶ)」を結成。集落の自然や営みなどの地域
資源を生かして、「レンゲ祭り」「ホタルコンサート」「屋外映画祭」等の都市農村交流イベントを企画し、毎月1
回程度開催して多くの集落外からの客を集めている。
また、農家が農業生産だけでは成り立たなくなっている現状を踏まえ、農家のもう一つの収入の柱をつくろうと、
平成4年に地域住民と行政職員など10名で「安心院アグリツーリズム研究会」を組織。農村の環境を生かしたプ
ログラム等の研究を重ねた。さらには農家だけでなく、
街全体で連携をするために、平成8年にはさらに広範
囲のメンバー30名で「安心院町グリーンツーリズム研
究会」を組織。安心院町(当時)全体でグリーンツーリ
ズムに取り組むこととなった。平成14年からは「集落
グリーンツーリズム」として、修学旅行・体験旅行を集
落に受け入れを開始。年間約40校の学校が集落を訪れ
ている。これらの受け入れが農家の収入になっているだ
けでなく、住民らが各種プログラム等を楽しみながら企
画・実践していることで集落内コミュニティーの形成に
も役立っている。
こうした松本集落を魅力に感じたIUターンも生まれ
ており、これまでにIターンが9家族29名、Uターン
7家族23名が移住した。現在では集落の総世帯数の3
割を占めている。平成16年には、各種の活動が評価さ
れて「農林水産祭むらづくり部門天皇杯」を受賞した。
ほかにも、平成20年には安心院町内の農業者らが協
力して「企業組合百笑一喜(ひゃくしょういっき)」を
設立。農産物の販売事業による農家の所得向上を目指し
て、地域産農産物の給食事業への提供、大分市や別府市
などのスーパー等小売店へ直売、産直コーナー運営など
の販路拡大に努めているほか、酒造会社と協力して「オ
リジナル日本酒」やハウスワイン特区制度を活用して「イ
モリ谷オリジナルワイン」を作るなど、活発に活動が続
いている。
今後は、集落の活動全体を包括し、かつ事務局的業務
を一括して担うことのできる組織を集落内に設立するこ
とで、農業とグリーンツーリズムの複合経営や集落内人
材バンク設置(農作業補助等)などの営農の更なる効率
化に加え、集落情報のさらに活発な対外的発信を行うた
めに、全国の集落関係者ネットワーク化、農家レストラ
ンの開設(食材、メニュー開発)、情報の発信、周辺集
落との効果的な連携等を目指している。
元々はまとまりがなく、活気がなかった集落がだった
が、大豆の集団営農をきっかけにまとまりを見せ、各種
イベントの企画等を行うまでになった。集落住民が協働
して行った活動によって集落内に良いコミュニティーが
生まれたことに加え、活動を通して外部から人が訪れ「注
目をされる」ことで集落住民の意識の変革をもたらし、
集落に対する誇りを生んだ。そしてその誇りが「もっと
何かをやろう」という集落活性化の好循環を生み出して
いる。

インタビュー:荷宮英二氏(事務局長/安心院・松本イモリ谷苦楽分)

安心院・松本イモリ谷苦楽分
事務局長
荷宮英二氏