「移住」を体験するプログラム(新潟県中越地域)公益社団法人中越防災安全推進機構復興デザインセンター|地域活性化100

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「移住」を体験するプログラム
公益社団法人中越防災安全推進機構復興デザインセンター
新潟県中越地域

新潟県中越地域の地域の概要

新潟県の中越地方は新潟県を4等分(上越、中越、下越、佐渡)した地域のひとつ。長岡市、三条市、柏崎市、
十日町市、魚沼市など9市5町を含む。平成22年の地域内の人口は約79万人。三国山脈、越後山脈に挟まれた
信濃川流域の地域で、コシヒカリの産地で米どころとして全国的に有名。平成16年に発生した新潟県中越地震で
は当時の川口町(現、長岡市)で震度7を記録し、68名が亡くなる被害が出た。山間部は日本有数の豪雪地帯で
あり、以前から少子高齢化が進行していたが、地震をきっかけとして人口減少と少子高齢が急激に進行した。例え
ば、特に被害が大きく、全村民が避難を余儀なくされた旧山古志村(現、長岡市)では、震災前は約2,100名だっ
た人口が震災後には約1,500名にまで減少した。

取り組みの概要:「移住」を体験するプログラム

平成16年に発生した中越地震は地域に大きな被害を出したが、震災直後から多くの人が復興支援ボランティア
として中越地域に入ったため、多くの東京など都市部の人とのつながりが生まれた。また、震災をきっかけとして
地域住民の中に、地域の未来に対する危機感が高まり、各地で地域おこし団体やNPOなどの団体が立ち上がり、
体験プログラム、農産物の直売、農産加工品の開発、農家レストランなど、数々の地域おこし活動が動き出した。
Iターン留学「にいがたイナカレッジ」は、公益社団法人中越防災安全推進機構の復興デザインセンターが事
務局として運営している。都市部の若者が数週間の短期から1年の長期にわたって中越地方の農村地帯で生活し、
地域住民とともに農作業等を行いながら、地域づくりや農産物6次産業化などの地域おこしについて学ぶ実践型
プログラムである。現場で実際の活動を行う「実践型トレーニング・実地研修」と、中越地域で行われている地
域づくり活動について体系的に学ぶ「地域学スクール・講義研修」の2つのプログラムで構成されており、この2
つのプログラムを組み合わせて、自分の生き方を考える、見つける、創り出す事を目的としている。
「実践型トレーニング・実地研修」には、主に3種類のテーマがある。1つ目は地域づくりや地域マネジメント
活動をする団体やNPOで、地域づくりについて実際に仕事をしながら学ぶ。2つ目は農業の6次産業化、やコミュ
ニティビジネスを実践する組織や団体で、農業加工・販売や、農村へのツーリズムなどについて学ぶ。3つ目は、
農村に入って農家とともに、農業を主体とした複合的な生業で暮らす事を体験する。このプログラムの特徴は、「現
場密着」「実践第一」であり、実際に様々な地域づくりを実践している人たちと一緒に活動しながら研修を行うと
いう点と、実際に地域に入って生活をし、仕事や活動だけではなく、地域行事にも参加することで「住民の一員」
として生活をする点にある。
例えば、長岡市川口地域で行われている「山の資源を”なりわい”に変える!山修行実践型インターン」では、
山を舞台に活躍をする人々とともに、獣肉(獣害対策として猟師が捕獲したイノシシ、シカなどの肉)の活用方法
を地域の人と共に考え、実践する。他にも十日町市中立山・中原集落で行われる「5世帯の集落で有機農業を中心
に昔ながらのムラの暮らしを実践するインターンシッププログラム」では住民10人の限界集落に移住し、集落の
存続活動を行う2人の「Iターン農家」とともに、農作業を行い、生活技術を習得する活動を行う。など、それぞ
れの地域の特色や、それに取り組む団体・人の魅力に溢れた、特徴的なプログラムがある。
「地域学スクール・講義研修」では、地域課題を地域住民が自ら把握して行動するために必要な様々なアプロー
チ方法について学ぶ。このスクールの講師は「匠(たくみ)」と呼ばれており、地域づくりの実践者、農業者、地
域の起業家など、様々な知恵や技を持ち、地域で活躍する「匠」を先生に招いての講義が行われる。
主に3つのコースからなり、地域の課題を地域住民が自ら把握し行動するためのアプローチとして、様々なア
プローチの方法(ツール)を学ぶ。
1つ目の「地域学コース」では、地域づくり分野をさらに深く学ぶための研修プログラムとして、地域資源探し
調査・集落歩き、地域づくり事例紹介、などを行うことで、中山間地域の地域づくりのアプローチ手法を学び、そ
の実践活用方法を考える。2つ目の「仕事おこし・起業コース」では、地域資源を活用したスモールビジネス(農
村起業)を起こすために必要な知識や事業計画づくりなどを学ぶ。3つ目の「匠の業コース」では、農村に伝わる様々
なワザや伝統技術など(農業・加工技術、郷土料理、家の修繕などの生活技術)を「匠」(地域の先生)から学ぶ。
さらに、このプログラムは参加者の状態に合わせて選べるように「長期」と「短期」が用意されており、「短期Iター
ン留学」は、主に夏季の1〜2週間で開催される。「まずは体験してみたい」というニーズに応えるためのもので、
地域づくりの実際の現場を見てみたい、ムラの暮らしを体験してみたい。という興味はあるが、1年間の「留学」
や移住には踏み切れない人に向けて、カリキュラムを短期間に凝縮されたプログラムである。※参加費は無料で、
宿泊場所等は事務局が用意する。これまでにこの短期プログラムには30名ほどが参加しており、そこから実際に
長期プログラムへの参加や移住につながった例もあるという。
一方、「長期Iターン留学」は1年という長期間をかけて、このプログラムを実践するもので、本気で学びたい
という意識が高い人が参加する。参加者は1年間、地域で実際に生活し、地域に溶け込み、「匠」と呼ばれる地域
の先生や地域住民と向き合いながら、じっくりと学ぶ長期滞在型のプログラムである。主な受け入れ先は、地域づ
くり団体、農家、6次産業化に取り組む地域企業などで、参加者には研修期間中は月額5万円の手当てが支給され
るほか、地域の空き家や、車などが貸与される。これまでに15名ほどがこの長期インターンに参加している。今
年度(H24年度)の参加者7名の内6名が地域内で仕事を見つけ「定住」する予定である。
昨今、「移住」や「田舎暮らし」という言葉が魅力的に使われることが増えたが、特に若年層にとって「移住」
は人生における大きな決断である。イナカレッジの提供するプログラムは、若者の「移住」に対する敷居を下げ、
地域と移住者の双方にとって幸福な移住を実現するための有効手段の一つである。
イナカレッジでは情報発信にも力を入れている。中越地域に移住した若い女性4名に「移住女子」というネー
ミングを付け、移住女子によるフリーペーパー「ChuClu(ちゅくる)」を発行している。彼女ら自身がライターと
して、実際に生活をしている女性の目線から「中山間地域の暮らし」と「移住女子の暮らし」などを伝える。地域
の食、人、できごとを女性の目線で伝えているところが新鮮で、「あいたいせがれ」では農家等の長男などを、女
性独特の視点で取材して記事にしている。さらには、なかなか知ることのできない、移住した女性の恋愛から収入
までの「暮らし」を詳しく掲載しており、移住に興味を持つ若者にとっては重要な情報となっている。発行の資金
はクラウドファンディングを活用して寄付を募り、寄付金額は105万円になった。平成25年に創刊し、年4回の
季刊誌で2,500部が発行されている。

インタビュー:日野正基氏(復興デザインセンター/公益社団法人中越防災安全推進機構)

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復興デザインセンター
日野正基氏