農協撤退後の地域生活を守れ!地域住民108戸で作った株式会社(高知県四万十市西土佐大宮地区)株式会社大宮産業|地域活性化100

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農協撤退後の地域生活を守れ!地域住民108戸で作った株式会社
株式会社大宮産業
高知県四万十市西土佐大宮地区

高知県四万十市西土佐大宮地区の地域の概要

高知県と愛媛県との県境に位置する高知県旧西土佐村(現四万十市)の大宮地区。四万十川の支流に沿った山
合いに家屋が点在する。昭和50年には528人(148世帯)だった人口が、平成26年時点では286人(130世帯)
にまで減少、高齢化率は49.7%にまで上昇。集落の主な産業は稲作や露地野菜(ナス、シシトウ等)を中心とし
た農業であり、農家は67戸(うち専業農家は17戸)ある。
集落内の商店は3軒の酒屋のみで、住民は日用品等の買い物のために、32km離れた愛媛県宇和島市中心部か、
50km離れた四万十市中心部に行く必要がある。最寄りの給油所までは15km。しかし、交通は事前に予約を必要
とする「デマンドバス」(四万十市街地から配車)のみであり、自家用車等の移動手段を持たない高齢者は買い物
もできない。また、医療も週2日の出張診療のみで、最寄りの病院は約20km離れた旧西土佐村の中心地まで行
く必要がある。

取り組みの概要:農協撤退後の地域生活を守れ!地域住民108戸で作った株式会社

株式会社大宮産業設立のきっかけは平成16年、経営合
理化を目的とした農協の統廃合により「高知はた農協」大
宮出張所の廃止案が浮上したことにある。商店等がない集
落にとっては唯一の生活品・食料品等の販売場所であり、
農作業や生活に欠かすことのできない給油所でもあった。
農協が閉鎖されれば集落維持にも関わるため、住民主体の
要望運動や署名等を行ったが叶わず。平成17年に農協の
撤退が決定したため、住民たちが農協事業継承委員会を設
立し運営方法等について検討を行った。
これまで農協が担ってきた購買と給油の事業を継続する
ため、住民の約8割に当たる108戸が合計700万円を出
資(住民一人の平均約60,000円)し、平成18年5月に「株
式会社大宮産業」を設立した。店舗と倉庫、給油所には農
協の設備を購入し、国や県の補助金を活用して整備を行う
など、資本金が少ない中で既存設備や補助金を有効に活用
するなどの工夫を行っている。
住民の生活を守ることを目的に、店舗では食料品(生鮮
食品除く)から生活雑貨、農業用品までを販売し、農協売
店の頃と同等の品揃えを実現している。隣接する給油所で
は車のガソリンと農作業機械に不可欠な軽油の販売を行っ
ている。営業は8時30分から17時まで(定休日は第2・
4日曜日)で、唯一の正社員である30代の男性と、集落
内の女性数名がパートとして店舗運営を担っているなど地
域内での雇用も生んでいる。他にも店舗に来られない高
齢者宅への宅配サービス(週2回)も行っている。
平成23年の利用者は1日平均90人で、採算化が懸
念されたが、初年度の平成18年度は3,500万円、平
成23年度には6,200万円を売り上げ、6期連続の黒字
経営を達成している。売上の内訳(平成23年)は、燃
料販売が54%、米の販売が20%、食料品・生活用品が
17%となっている。
大宮産業は地域コミュニティーの維持にもおいても重
要な役割を担っている。店舗の一角にソファーが置かれ、
談話スペースとして住民の日常的な交流の場になってお
り、一人暮らしの高齢住民が大宮産業で語り合う光景が
見られる。他にも、店舗前の広場を利用して、夏の「土
曜夜市」や「住民への感謝祭」などのイベントを定期的
に開催している。
また、大宮産業では「アドバイザー会議」を定期的に
開催。地域住民と大宮産業の意見交換の場であり、集落
内の各地域からアドバイザーとして様々な世代の14名
が集まり、店舗の商品構成から販売方法、イベント企画
等について意見交換をするともに、大宮産業からも年間
売上や来客数等の実績を報告する。この会議は、集落の
人たちの暮らしや要望を第一に考える故の工夫である。
しかし、地域住民の高齢化による人口の自然減は確実
に進行しており、今後の利用者減は確実である。そうし
た課題に対処するために、地域のものを外に売って「外
貨」を得る「地産外商」にも力を入れる。地域で栽培し
た米を「大宮米」と名付けて外部に販売。四万十市の小
学校の給食、市立病院の病院食、高知市内の私立学校給
食、近隣地区の福祉施設等で使われるなど着実に販路を
広げている。米の販売は平成23年には1,200万円とな
り、一つの大きな柱になりつつある。他にも集落内で栽
培された路地野菜の直販や、他地域への販路開拓などを
行うなど「外貨獲得」の努力を続けている。
大宮産業によって買い物というライフラインの一つは
守られたが、交通や医療などは依然として厳しい状態に
あることは変わりない。「地域を支える株式会社」として、
今後は地域の交通や医療分野への進出も視野に入れてい
る。厳しい状況に晒されながらも、地域の皆で作った株
式会社を活用して、豊かに生きる姿を示した事例である。

インタビュー:竹葉傳氏(代表取締役/株式会社大宮産業)

株式会社大宮産業
代表取締役
竹葉傳氏