地区を支える「新しい公共」を担う株式会社(新潟県十日町市)株式会社あいポート仙田|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域のくらしをまもる>生活をまもる
地区を支える「新しい公共」を担う株式会社
株式会社あいポート仙田
新潟県十日町市

新潟県十日町市の地域の概要

十日町市の仙田地区は、十日町市市街地から16kmほど離れた山間地帯にある。以前は仙田村であったが昭和
の合併により川西町となり、平成の合併で十日町市になった。平年の積雪は時に3mに達する豪雪地帯に12集落
が点在しており、すでに3集落は廃村となっており、有人の9集落に約700人、269世帯が暮らしている。全集
落の高齢化率の平均は46.3%で、最も高齢化率が高い集落では76%にもなる。高齢者の一人暮らしも多い。平成
18年には農協の支所が、平成21年には農協の購買店(Aコープ)が撤退し、日用品や食料品を購入する場所も
なくなり、翌年には地区内の小学校と保育園も閉校・閉園となり、集落の存続が危ぶまれていた。

取り組みの概要:地区を支える「新しい公共」を担う株式会社

平成22年、地区の状況に危機感を持った地区の有志によっ
て「株式会社あいポート仙田」が設立された。あいポートは農
業生産法人でありながら、単に農業だけでなく、地区の生活支
援や、高齢者支援などの生活サービスも行っている。つまり、
高齢者が大半を占める地区の便利屋であり、世話役として、地
区で起こる様々な出来事に対応する「地域マネジメント法人」
として地域にとって欠かせない存在となっている。
仙田地区では、平成5年頃から高齢化が急速に進む地域の
将来に対して危機感を持ち、話し合い等が度々重ねられてきた。
そうした中で平成21年、地区内唯一の店舗であった農協の購
買店(Aコープ)が撤退し、また、地区内の小学校と保育園が
閉校・閉園するなど、地区の存続が危ぶまれるようになった。
地区内には、これまでも任意の営農組織があったが、農業の
枠を超えて世話役に徹するマネジメント組織はなかった。
そこで、農業だけでなく、地区の生活支援も行う組織として
株式会社を設立する構想が浮上した。それまでに前例のない形
の法人でもあったため、なかなか地区住民の理解を得られな
かったが、有志数人が会社設立の必要性を説いて集落を廻り、
17回にも及ぶ説明会を経て、平成22年に発起人6人、資本
金114.8万円(株主は地区内の有志15人)で「株式会社あい
ポート仙田」を設立した。
あいポート仙田は会社の理念として「地区のマネジメント法
人として、新たなる公を目指す」と掲げている。事業は主に「農
業支援事業」「高齢者支援事業」「生活支援事業」の3つの事
業からなる。
「農業支援事業」では、離農者に代わる水田の耕作、農作
業困難者への支援(農作業受託)に加え、これまでバラバラ
に運営されていた地区内の農業関係組織の業務も受託してい
る。特徴的なのは、会社が地区の農業を集約化して全てを担っ
てしまうのではなく、高齢の農家にもできるだけ耕作をして
もらうことを前提とし、農作業が困難になったときに会社が
引き受けるというスタンスであることだ。これは、高齢者に
とって農業は生きがいであるという考えによるものである。
現在、あいポートで約10haの農地を管理しており、うち、
会社が小作権を有している農地が3.6ha、作業受託として耕
作をしているのは6.5haになる。
また、2つ目の柱である「高齢者支援事業」では、主に高
齢者宅の冬季の除雪作業を行う。毎年平均20戸前後の屋根
の雪下ろしを冬季の間に数回にわたって行う。ほかにも、地
域のNPOと協働で、地区の道の駅で高齢者通所事業も行う。
3つ目の「生活支援事業」では、食料品から日用雑貨まで
生活に必要な様々な品物を取り揃えた店舗を開設し、買い物
難民の解消をしているとともに地域コミュニティの集いの場
となっている。店舗に併設した食堂も経営しており地産地消
の推進を行っている。他には、集落自治業務の受託、地域イ
ベントの開催、行政との調整、地区自治組織の事務局的な役
割、農業関係の補助金申請の相談など業務の内容は多岐にわ
たる。
今や、地域から欠かすことのできない存在となっているあ
いポート仙田であるが、その実情は非常に厳しい。第一に人
材難である。現在は2名の専従役員、3名の正社員、6名のパー
トが所属しているが、その平均年齢は65歳である。農作業
や冬季の雪かきなどの重労働作業を少ない従業員でこなさな
ければならず、高齢の従業員にとって大きな負担となってい
る。しかし、こうした人手不足を解消しようとも、山間地の
法人であるため従業員募集に応じる人がおらず、さらに収入
が乏しいために良好な雇用条件が設定できず、必要な人材を
雇うまでに至っていない。
そして、常に資金難の課題も抱えている。主な収入源は農
業部門の米の販売や作業受託であるが小規模なために大きな
収入にはなっていない。そのほか、生活支援サービスについ
ても地区住民から十分な費用をとることもできない。経営は
非常に厳しい状態にあり、平成25年の売上高は4,716万円
で経常利益は-562万円、税引後の利益は9万円程度であり、
役員報酬にいたってはほぼ皆無である。
自治体の合併や、農協の統廃合によって、地域における住
民サービスの密度低下が進む中で、地区の維持のためには、
あいポート仙田のような地域住民による地域密着型のマネジ
メント組織の重要性は今後さらに高まる。しかし、そうした
組織が安定して事業に取り組むことができるための支援が必
要である。

インタビュー:長谷川東氏(取締役/株式会社あいポート仙田)

株式会社あいポート仙田
取締役
長谷川東氏