よく生き、よく死ねる、地域社会をつくる(愛媛県上島町)NPO法人ふくふくの会|地域活性化100

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よく生き、よく死ねる、地域社会をつくる
NPO法人ふくふくの会
愛媛県上島町

愛媛県上島町の地域の概要

上島町は愛媛県の北東部、広島県との境に位置し、瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ18の島々により構成される町
で、平成16年に越智郡の弓削町・生名村・岩城村・魚島村が合併して誕生した。弓削島は、旧弓削町の中心とな
る島で、現在町役場が置かれている。交通の中心は、広島県福山市因島との海路交通が主で、弓削島と因島の間を
約10分で結んでいる。島の歴史は古く、島内からは旧石器時代後期のナイフ型石器などが発見されるほか、平安
時代は大量の塩を納めていることから「塩の荘園」と言われた。島の主産業は漁業であるが、広島県の都市部が近
いこと、並びに島内での仕事(雇用)が少ないことから、若者を中心に島外への流出が続いている。また、高齢者
にあっても、島内に十分な治療を施せる医療施設や福祉施設が少ないことから、やむをえなく島外に移住するといっ
た、人口減少に拍車をかけることにつながっている。
そのような中、「よく生き、よく死ねる、地域社会をつくる!」という活動理念のもと、島で人生を完結できる
福祉施設を目指し、地域密着型のサービスを提供している特定非営利活動法人ふくふくの会は、高齢者が最後まで
島内で生活できること環境づくり、そして島内に仕事をつくり、若者等の人口流出を防ぐ一翼を担う取り組みとし
て注目されている。

取り組みの概要:よく生き、よく死ねる、地域社会をつくる

特定非営利活動法人ふくふくの会の活動は、介護保険に基
づく介護事業が中心である。島にあった保育園の旧園舎をリ
フォームし、10年前から小規模多機能型の委託介護サービ
スと有料老人ホームが一体となった福祉施設の運営してい
る。また、平成26年の4月より、町内の医療機関と連携し
た医療サービス付き高齢者住宅の運営も行っている。更に、
島の魅力を再発見しようをコンセプトに季刊誌「上島ピープ
ル」を発行している。
取組のきっかけとして、福祉施設の利用者・入居者は、主
に上島町の島民である。島民の多くは「生まれ育った島に居
続けたい」と願っているが、10年前に事業を始める前はデ
イサービスやホームヘルパーなどが島内に充実しておらず、
やむなく離島するケースが多かった。終末医療の現状も逼迫
していることもあり、地域に改善を望むニーズも見られた。
取組を始めた頃は、介護保険の法制度が施行される以前で、
はじめは「食の安全性」を望む住人の声をきっかけに、ボラ
ンティアによる配食サービスを開始した。次第に公的なデイ
サービスの時間外でのサービスの要望が高まり、早朝・夕方・
深夜の対応の出来る島民向けの寄合所を立ち上げた。ボラン
ティアの人数も増え、事業を本格化させる際は、配食サー
ビスで培った住人のニーズをデイサービスセンターとい
う形になっていった。さらに、「大きな施設より身近な
小さな施設」が認知症の方に好評となり、小規模多機能
型の介護サービスを展開するようになった。
介護事業の特徴としては、「最期まで、その人らしく
生きていくのを支えていく」、「施設の中で完結せず、地
域の行事に参加したり、海、山など自然とふれあえる事
業を心がける」ことにあると考えている。季刊誌を発行
する目的は、ふくふくの会の事業を知ってもらうだけで
なく、「老いや死」についてや、終末医療・福祉につい
て考えていただきたいとの思いがある。
デイサービス事業を展開後、現在では2つの施設で
46名の介護者を抱え、スタッフの数は34名にまで増
加した。この事業によって、地域の活性として「老人へ
の支援」と「雇用」の2つの効果をもたらしていると
言える。スタッフも当初はリタイヤ層の元気な高齢者が
多かったが、近年、若いスタッフが増えてきている。若
い人にとって、はじめは介護を毛嫌いする傾向があっ
たが、近ごろは、「この仕事をやってやろう!」といっ
た使命感が生まれてきており、地域活性の好循環につな
がってきている。

インタビュー:竹林健二氏(特定非営利活動法人ふくふくの会理事長)「大切なのは、ちょっとした使命感と勇気です。」

大切なのは、ちょっとした使命感と勇気です。
竹林健二氏
特定非営利活動法人ふくふくの会理事長
地域づくり、地域活性を進めていく中で、取り組みを担ってくれる人、協力してくれる人がいないという声が良
く聞かれる。では、なぜ担ってくれないのか、手伝ってくれないのか。それは何もしていないからである。0(ゼロ)
のもの(何もしていないもの)に助けてくれる、助言をくれる人はほとんどいない。しかし、0(ゼロ)から1に
すると変化がある。どんな行動でもいいが良いと思ったことを行動に移せば、不思議と手を貸してくれる人が集ま
る。確かに、新しく事業をはじめるには資金も必要であり勇気もいるが、ちょっとした使命感と勇気があれば0(ゼ
ロ)から1に出来るはずである。
取り組みの継続が、人々の理解を得ることにつながり、それが継続のパワーと地域活性につながっていく。はじ
めは介護サービスを利用する人も少なかった。しかし、取り組みを継続していく中で、「歳をとったら頼むね」な
ど声をかけられるようになった。これまでは、歳をとるとやむを得なく島を離れなければならなかった。これから
は島で暮らし続けられる保険として、自らの存在を感じるようになってきており、それが取り組みを継続するパワー
の源となっている。若いスタッフのそのように感じているであろう。
地域づくりや地域活性は、目の前にある地域の課題を何とかしたいという思い、その思いに対するきちんとした
対応の延長上に形づくられるものである。