地域医療を救う、病院・市民・農家の連携(北海道留萌市・増毛町)留萌がんばる会/パプヤの里|地域活性化100

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地域医療を救う、病院・市民・農家の連携
留萌がんばる会/パプヤの里
北海道留萌市・増毛町

北海道留萌市・増毛町の地域の概要

留萌市は、北海道の日本海側に位置する水産加工業が盛んな町で、全国一の生産量と品質を誇る“数の子”の町
として知られている。しかし、昭和45年頃からの漁業・水産加工業の衰退等から人口の流出が進み、昭和42年のピー
ク時に45,000人強だった人口が、平成9年には30,000人、平成22年には25,000人を割りこむなど人口減少が
著しい。増毛町は、留萌市の南側に位置する人口5,000人ほどの町で、暑寒山麓に囲まれた扇状地の良質な水と、
温暖な気候を活かしてりんごやサクランボをはじめとする果樹栽培や水稲などの農業が盛んに行われている。しか
し、かつて陸の孤島と呼ばれていたほどの交通不便性、また、基幹産業の1つであった漁業の不振などによる人口
減少が進み、ピーク時の昭和30年の人口16,000人強の3分の1ほどまでに減少している。
このような中、リハビリ・りんご園では生産者の高齢化により廃園・伐採寸前であったりんご園を有効活用して、
医師・医療スタッフ不足に悩む地域の医療機関と連携し、園芸療法・地域リハビリテーションに取り組んでいる。
医農連携による同園の取組は、農地が有する多面的機能の活用による農業の担い手確保と、医師不足という地域課
題の双方の課題解決につながる地域活性の取り組みとして注目される。

取り組みの概要:地域医療を救う、病院・市民・農家の連携

本取組に至る背景として、市民との二人三脚で公立病院の存続を図る取り組みが挙げられる。全国には1,000を
超える自治体病院が存在するが、とりわけ地方にあっては、住民の多くが大病院や都会に流れ、更に病院経営が厳
しくなるといった状況が見られていた。留萌市立病院にあっても同様に、不採算部門を抱え、全国の自治体病院の
中で“ワースト9位”の経営状態の時があった。しかし、この不採算部分こそ、地域にとって欠かすことができない、
救急・お産・小児科といった部門であり、地域の安全安心な暮らしのために、病院の存続こそが重要な地域課題と
して挙げられた。そこで、“地域医療再生”という面は強く出さず、“まちづくり”というニュアンスを強めた活動
を市民団体が展開する。留萌市立病院の医療スタッフ確保に協力する市民団体である「留萌がんばる会」は、まず、
市民の市立病院に対する理解度を高めるための市民向け広報誌を作成する。
当時は悪い経営状態等に対する病院への中傷が市民から多く聞かされていた。そこで、市民に「有能な医師がい
る」という事実を知ってもらうための、広報紙を「留萌がんばる会」が作成し読んでいただくことで、市民が病院・
医師の状況を知りことになる。これにより、病院に対する中傷がなくなるとともに、病院に訪れる市民が増えるこ
とにつながった。また、経営改善の手法として、“リストラ”が考えられるものの、医療の現場では、医療スタッ
フの確保こそが病院経営の黒字化につながる仕組みであったことに気付く。しかし、留萌管内には、医療・看護系
の大学及び専門学校は存在しないため、医療スタッフの確保が困難であった。
そこで、留萌がんばる会が中心となり、学校訪問や留萌市立病院見学ツアーを実施する。全国から医師・看護師
を目指す学生が留萌の地を訪れ、研修と地域住民との触れ合いを通じて、留萌の住み心地の良さを知ってもらうこ
とになる。もともとの病院側の必死の努力とが奏功し、22名まで減少した常勤医が33名まで復活を遂げ、病院経
営も黒字化を達成している。そのような市民団体による病院再生の取り組みから端を発し、医農連携の「リハビリ
りんご園」の取り組みに繋がっていく。
増毛町にある農園「パプヤの里」では、生産者
の高齢化により廃園・伐採寸前であったりんご
園を引き受けて、平成23年度から地域資源と
して有効活用を始める。医師・医療スタッフ不
足に悩む地域の医療機関と連携し、リンゴ園で
園芸療法・地域リハビリテーションに取り組む
内容である。地域のデイケアと連携して園芸療
法の実験ファームとして活用し、その効果を
測定したところ、園芸療法は若年認知症等のリ
ハビリ治療に効果的であることが分かる。そこ
で、毎年5月から11月までの週1回、リハビ
リりんご園を医療系学生の実習の場として活用
する。医療実習期間中における地域住民と医療
系学生の交流により、地域の良さを分かっても
らい定住化を促して、地域における医療スタッ
フの確保につなげることが目的である。同園に
おける医療系学生の研修受入は、平成24年度
の実績で本州から4名、道内から20名で、本
取り組みを通じて平成25年度に1名の看護ス
タッフを、平成26年度には研修医1名の確保
につながっている。

インタビュー:森義和氏/富野嘉隆氏(留萌がんばる会/パプヤの里)「課題解決のためには、地域の連携が重要」

課題解決のためには、地域の連携が重要
森義和氏/富野嘉隆氏
留萌がんばる会/パプヤの里
地域課題の解決、社会課題の解決のためには、地域の様々な組織がそれぞれの技術等を活かして連携と協力して
いくことが大切である。医師不足・病院の経営悪化という病院の課題、担い手不足・耕作放棄地という農家の課題、
地域医療サービスの衰退という住民サービスの課題という、それぞれの地域課題・社会課題の解決を、各主体が連
携して行ったのが特徴である。当初は、園芸療法として効果のあるリハビリ農園を病院内につくるということも考
えられた。しかし、地域課題の解決を地域が一丸となって取り組んでいく上では、病院は医学的な見地で、農家は
自ら行っている農業・農地の視点から、それらを繋ぐ中間支援組織としての市民団体が存在するといった、それぞ
れの立場(病院・市民・農家)が、それぞれの技術等を活かした連携と協力が重要であり、それこそが地域資源を
活用した地域活性化につながっていく。
都市との共存・共生のために、地域の資源(人材含む)を有効活用も重要だ。医師の確保、移住定住者の確保の
ためには、地域の生活サービスの確保、並びに、地域の魅力の発信が必要である。特に、地方にあっては、その土
地に住むというプライド(農家にとっては、農地を有する、農業を行うというプライド)を最大限に活用すること
が必要である。
リハビリりんご園自体は、福祉的・PR的な視点で実施しているため、現在は、その取組自体が収入を得る手段
となっていない。将来的には、自然があり、医療と連携した町として売り出し、定住者(ファン)の確保につなげ
るために、福祉的旅行の展開を図っていくことで、地域経済の活性化にもつなげていきたい。
リハビリが行われるリンゴ農園