地域と産業と学校教育を近づけるキャリア教育(山口県周防大島町)株式会社ジブンノオト|地域活性化100

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地域と産業と学校教育を近づけるキャリア教育
株式会社ジブンノオト
山口県周防大島町

山口県周防大島町の地域の概要

周防大島町は、山口県の東南部に位置し、瀬戸内海に浮かぶ島では淡路島・小豆島に次いで3番目に大きな
面積を有し、本土とは大島大橋でつながっている。瀬戸内の温暖な気候に恵まれた柑橘類やサツマイモの産地で
あるとともに、釣り人や夏場は海水浴客などが訪れる観光地でもあり、山口県・広島県をはじめ多くの観光客が
訪れている。人口は2万人弱で高齢化率は50%に迫っているが、官民が協力して立ち上げた周防大島町定住促
進協議会や島暮らし希望者が島で自活している人と面会できる「無料島人紹介所」など定住促進の取組みも盛ん
であり、近年では都市部から周防大島へ移住する人が増えており、過去3年間、毎年転入者500人以上で社会
増となっている。

取り組みの概要:地域と産業と学校教育を近づけるキャリア教育

平成16年の夏、周防大島町にUターンした大野氏は、最初にフリーペーパーを発行した。カフェやパン屋を
起業した人、今では大きくなった瀬戸内ジャムズガーデンなど、周防大島町で起業した人を対象に単独で取材・
編集し、5年間で14号を発行した。この活動を進めていく中で直面した出来事は「次の取材先が見つからない」
ということであった。人口2万人足らずの島であるため、毎月取材対象となる起業家を探し出すことが難しく、
このことを肌で感じた大野氏は「起業家が生まれる学校、起業家が集まる学校を作ろう」という考えに至る。こ
の提案は、大島商船高等専門学校の教授からの賛同も得られ、学校と島の発展を目指そうと意気投合し、文部科
学省の科学技術振興調整費事業『地域再生人材創出拠点の形成』に申請することとなり平成19年度に採択を受
けた。5年間を国の事業として、その後は町と県の共同事業として継続しており、例年様々な年齢や職業の人々
が参加し、これまでに191人の卒業生を輩出し、20組程度の起業家が生まれている。
起業家養成事業に関わる一方で、平成20年度に大野氏の卒業した中学校が廃校になった。このことに衝撃を
受けた大野氏は、母校が統廃合された中学校にキャリア郷育※を取り入れてもらうよう提案し、平成21年度か
ら毎年、総合的な学習の時間を利用し、年間を通じて毎月キャリア郷育を実践している(※「郷(ふるさと)」
を育むキャリア教育として大野氏が提唱している名称)。過疎高齢化が進展する島で手に職をつけるためには、
自らの力で切り開いていく力が必要であるという考えのもと、島を出て行った子どもたちが「島に戻りたい」と
考えた時に戻りやすい環境を整えておくこと、自ら戻れる力を育てておくことを見据えて、学校教育の中で故郷
と起業について学び、体験し、実践するキャリア郷育プログラムを行っている。
例えば、2年生のプログラムでは、近隣の道の駅での実践販売を行う。4月から11月にかけて企画を練り、
参観日で保護者へのプレゼンテーションにより資金を集め、11月の実践販売の結果をもとに、人件費や直接経
費などのコスト換算を学ぶなど、アントレプレナーシップを直に学ぶプログラムとして定着している。
今年の8月には、現在は大学生となったキャリア郷育の第1期生2人が、現役の中学校3年生のキャリア郷
育プログラム「夢のかけ橋」に登場し、自身の中学・高校から大学進学までの出来事や環境の変化について語り、
勉学をサポートするなど、OB・OGから現役世代への郷育が受け継がれていくという循環も生まれつつある。
大野氏は、キャリア郷育を今以上に日本の公教育に導入すること、キャリア郷育をコーディネートする人材を育
成するとともに職業として設置する仕組みを構築することを展望に、周防大島町でのキャリア郷育の継続的な実施
と日本におけるキャリア郷育の普及に取り組んでいる。

インタビュー:大野圭司氏(株式会社ジブンノオト代表取締役/周防大島町教育委員会コミュニティ・スクールスーパーバイザー)「究極の地域づくりは教育のシステムにある」

究極の地域づくりは教育のシステムにある
大野圭司氏
株式会社ジブンノオト代表取締役/周防大島町教育委員会コミュニティ・スクールスーパーバイザー
自分で切り開く力を身につける
周防大島では雇用の場が不足しており、このことがUターンの大きな妨げとなり過疎高齢化に拍車をかけてい
る。この現状に対して「自ら仕事を作っていく力がなければ10年経っても20年経っても一向に地元の子どもが帰っ
てくることはないだろう」と考えた大野氏は、既存の学校教育では不足している「自分で道を切り開く力(起業家
精神)」を中学生のときから学び、実践し、体験するキャリア郷育を始めることとなった。
外で活動しながら故郷に貢献する
島を出て行った子ども達の多くが、将来をそのまま島の外で過ごすことも自然であるし、必ずしも島に戻ってく
る必要があるとは思わない。ただし、彼らが島の外で活躍していくにあたって、故郷である周防大島のことを多少
なりとも意識することで地域に貢献することはできる。有名大学に進学した学生、都市部で活躍するサラリーマン、
社会課題の解決に挑戦する研究者などのOBが、島をPRしたり島を訪れて子ども達に自身の活動内容等について
話をする。そのような未来をイメージしながら郷土愛を醸成するプログラムも行っている。
究極の地域づくりは教育のシステムにある
「100年後も輝くふるさとにしたい」という長期ビジョンを立てている。「100年後に地域がどうなっているか」
を考えたときに、どのような社会・経済になっているかは想像がつかないが、教育は本質的に変わらない。先輩
OBOGが母校にきて現役の児童・生徒に自身が活躍している話や大学、社会の実態の話などをすることで、次の
世代が将来のビジョンを描き育っていくという循環をつくることができれば、100年後に世の中がどんな時代に
なっていても、その時代・その状況に合わせて輝いていける地域になれる。究極の地域づくりは教育のシステムに
あるという理念を持って既存の学校教育に不足しているキャリア郷育を実践している。