外部企業との連携による地域資源の活用(沖縄県与那国町)農業生産法人与那国薬草園株式会社|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域産業の変革>地域の特産をつくる
外部企業との連携による地域資源の活用
農業生産法人与那国薬草園株式会社
代表取締役社長
杉本 和信 氏
沖縄県与那国町

沖縄県与那国町の地域の概要

沖縄県与那国町は沖縄本島から南南西へ 520km に位置する日本最西端の島である。島の周囲は 27.49km ほど
の大きさで、平成 22 年時点の人口は 1,657 人。主要産業はサトウキビ、畜産、水産業であり、ダイビングや釣
りといった観光産業もある。近年ではテレビドラマのロケ地となったことで、ロケ地を訪ねる観光客もいる。平
成 16 年に実施された市町村合併の是非に関する住民投票の結果、反対が 62%と与那国町は合併ではなく独自の
自立の道を選択することとなり、地域の主要産業を育てていく必要が生じた。町は平成 17 年に「与那国・自立
ビジョン」を策定し、「与那国 5 大地域資源特産化事業(長命草、サトウキビ、畜産物、カジキ、泡盛)」として、
サトウキビなどと並んで長命草を地域資源のひとつとして位置付け、商品化をしていくことを決めた。長命草は、
与那国島では島の岸壁等に自生していたセリ科の植物である。古くから地域の祭りで長命草が奉納される風習が
あり、島内では長命草が体に良いことは知られていた。

取り組みの概要:外部企業との連携による地域資源の活用

当初、町内の関連機関が連携して長命草入りの食品などを
開発したが、「長命草」自体の知名度が低く、商品の販売は
低迷が続いた。転機となったのは、平成 18 年に化粧品メー
カーの社員が与那国町を訪問し、長命草の生産状況等につい
て視察したことだった。化粧品メーカーは長命草を健康食品
に利用することに可能性を感じ、町と連携しての製品化に向
けた取り組みがはじまる。商品開発にあたっては長命草を売
り出すとともに、与那国島のイメージを発信することも重視
された。
平成 20 年、長命草を利用したドリンクと、タブレット、
パウダーの健康食品が全国区で発売されたが、その直後、台
風の被害によって畑が壊滅的被害を受けたことで商品も一時
的に出荷停止となる不運に見舞われる。しかし、化粧品メー
カーの社員が島民とともに畑の復興を手伝ったことが、地域
と企業のつながりを深める結果となった。
「長命草」のタブレット、ドリンク、パウダーの3種類の
販売は好調でそれに伴って、長命草の需要が増大した。平成
17 年には生産量 3.3t、収穫面積 6.3ha であったが、5 年後
の平成 22 年の生産量は約 8 倍の 26.6t になり、収穫面積は
4.5 倍の 25.4ha にまで増加。安定的な生産量の確保とその
ための体制の整備が地域にとっての課題となった。
平成 22 年には、長命草の生産農家 39 戸で「与那国
島長命草生産組合」が設立された。この協議会には JA
沖縄与那国支店、与那国島商工会に加え、長命草の生産・
加工・出荷を行うために設立された「農業生産法人与那
国薬草園株式会社」が参加しており、町をあげての生産
拡大、協力農家の獲得に取り組んでいる。毎年、化粧品
メーカーと協議会の間で必要生産量の調整が行われるた
め、生産者の安定収入確保につながっている。町内の長
命草生産農家数も平成 17 年には 13 戸だったが、平成
23 年度には 50 戸にまで増えており、生産額は 253 万
円(平成 17 年)から 3,308 万円(平成 23 年)と伸び
ている。
この取り組みの特徴は、町外の企業、流通事業者等と
連携することにより、町内における生産〜加工〜製品化
〜流通の一連のルートを確立し、生産地としての地域の
役割と体制を明確に示したことだ。また、地域側も企業
の要望に応えるべく、作付け促進、協力生産者の確保な
どの生産体制づくりを行ってきたことにある。
さらには、そうした互いに真摯な姿勢で取引を行ったこ
とで、地域(原材料提供者)と企業(購入者)の関係を
超えて、対等の立場で関わったことがこの事業の成功と
持続的成長をもたらした。
また、町内の一部の業者や農家だけが恩恵を得るので
はなく、あくまでも地域全体で取り組む事業であり続け
ていることも特徴だ。人口も限られた地域内で、生産体
制に対応する人手を確保するために、農家だけなく、主
婦や高齢者も参加ができる体制を作っている。さらには、
島の中学校でも学校をあげて長命草の栽培・収穫に取り
組んでおり、収益は部活動の遠征費などに当てている。
まさにオール与那国島の取り組みである。
さらに、農地を持たないが長命草を生産したい人に対
しては、耕作放棄地を所有者から借用して農地を確保し、
栽培するという形態で参画してもらっている。そうした
生産者には女性や高齢者が多く、少量であってもきちん
と買い取る仕組みとなっているため、農家にとっても貴
重な副収入源となっている。
長命草栽培は、地域に産業の柱を作ったのみならず、
高齢者や女性の活躍の場を作り出したことで、地域住民
の生きがいをも生んでいる。