村を「まるごと」売り出す(高知県馬路村)馬路村農業協同組合|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域産業の変革>地域の特産をつくる
村を「まるごと」売り出す
馬路村農業協同組合
高知県馬路村

高知県馬路村の地域の概要

馬路村は高知県東部の 1,000m 級の山々に囲まれた山間に位置し、村の面積の 96% を山林が占める。村の人口
は昭和 45 年には約 2,100 人だった人口が平成 22 年には 1,000 人あまりに半減している。元々は林業が産業の中
心であった。昭和 50 年頃から馬路村農業協同組合が中心となって、当時から地域で盛んに栽培されていた柚子を
地域特産にする取り組みを開始。当時、各地の農協が合併をしていく中、馬路村では独自性を生かした「おらが村
方式」による単独での生き残りを図り、村内販売所の整備や物産展への出展、通信販売の充実等を進めた。現在は
60 種類近くの柚子関連商品があり、売上高は年間 31 億円に上るまでになり、柚子加工品の全国ブランド化に成
功で全国から注目される。現在、約 190 戸の農家が柚子の生産に従事している。さらに、「柚子の村」として丸ご
と売り込むという徹底した広告戦略も奏功し、アクセスが良くはない村に年間 6 万人を超える観光客が足を運ぶ。
町も温泉、キャンプ場、宿泊施設等を整備、森林鉄道の復元、各種体験教室や村内案内ツアーなど、村の特産品や
自然を生かした体験型観光を積極的に行っている。

取り組みの概要:村を「まるごと」売り出す

馬路村では、昭和 40 年頃から村の基幹産業であった林業の衰退をきっかけに、柚子の栽培が本格的に始まった。
馬路村産の柚子は形が悪く青果としての販売は低迷していたため、馬路村農協あでは昭和 45 年頃から組合員農家
が生産した柚子の搾汁を始め、「柚子果汁」の販売を開始したが、県外では柚子を使う食習慣がない地域も多かっ
たため柚子果汁の販売は低迷をしていた。
昭和 50 年頃からは県外の家庭の食卓にも柚子を使った食品を広げようと、加工品の幅を広げ、柚子酢、柚子佃
煮、柚子ジャム、柚子味噌などの商品開発に取り組んだ。当時の農協の農協職員は毎日のように百貨店に営業へ行
き、催事に参加するなどして馬路村の柚子の営業を行った。
こうした地道な営業活動が徐々に成果として現れ始める。昭和 61 年には現在も主力商品のひとつである濃縮
ジュース「ゆーず」を商品化、61 年には「ぽん酢しょうゆ・ゆずの村」を発売、63 年に首都圏にある百貨店が主
催した「日本の 101 村展」で大賞を受賞するまでになった。
馬路村を柚子加工品販売の飛躍的な発展のきっかけとなったのが、昭和 63 年に発売された柚子を使った清涼飲
料水「ごっくん馬路村」である。この「ごっくん馬路村」のヒットによって昭和 55 年頃に 3,000 万円ほどだった
売上高は、昭和 63 年には 1 億円を突破した。「ごっくん馬路村」のヒットの背景には、商品の魅力はもちろんだが、
「柚子や製品だけではなく、村を丸ごと売る」という外部デザイナーとのコラボーレションによる広告戦略にある。
これまでの商品を前面に押し出した広告ではなく、地元の人にとっては当たり前の、馬路村ののどかな農村風景や、
素朴な村人たちの笑顔、柚子の生産農家、清流で元気にはしゃぐ子供たちなど、村のありのままの姿を写した写真
を使ってパンフレットをつくり、テレビコマーシャルを放映した。これらの広告戦略は大反響を呼び、商品の売り
上げに大きく貢献し、売上高は平成 5 年に 10 億円を超え、平成 10 年には 20 億円を突破するまでになった。
さらに、こうした斬新な広告が村そのもののイメージを向上させて、それまではほとんどいなかった観光客も目
立つようになった。そしてなによりも、自分たちの日常や村の風景が外部に発信され、それが大きな反響を呼んだ
ことは村人たちの地域への愛着や誇りにつながり地域に
良い影響をもたらした。こうして、競合他社製品との差
別化に成功し、「馬路村の柚子」というブランドを確立
して現在に至っている。また、この頃から通信販売事業
(電話や FAX)にも進出し、馬路村の柚子が徐々に全国
区で認知され始めるようになった。
そして次の大きな変化は平成 12 年のインターネット
による通信販売が開始であった。当初は柚子の果汁を
使った商品が中心だったが、平成 8 年頃からは柚子の
皮を使ったふりかけ、お茶漬け、こぶ茶なども商品化。
さらには柚子の香りを活かした入浴剤や化粧水なども開
発し、現在では 60 種類以上になる。多彩なラインナッ
プの商品を、インターネットを利用して全国に販売する
ようになったことで、平成 17 年には売上高 30 億円を
突破するまでになった。当初は高知県内だけであったテ
レビコマーシャルは、現在では四国・中国の各県や遠く
青森県などでも放映される。
生産量の増加に伴い、平成 18 年には旧営林署跡地に
「ゆずの森」を整備。柚子の集荷場、柚子ドリンクの加
工場、出荷場、事務所などが集約されている。毎日のよ
うに訪れる各地からの視察にも対応するために、研修施
設や、「ごっくん馬路村」の生産過程を見学コースも整
備されている。近年力を入れているのは、柚子を使用し
た化粧品開発と製品化で、高知大学医学部と協働して柚
子の種に含まれる成分を活用した化粧品の研究を行い、
石鹸や化粧水などを開発した。「ゆずの森」敷地内には
化粧品の製造・梱包・発送を行う一貫体制システムの工
場も設置されている。
長年にわたって取り組んできた柚子の村づくりは、村
に多くの雇用を生んだ。現在、村内に 4 箇所の加工場
と化粧品工場があり、柚子果汁製品、柚子ドレッシング、
柚子種子油、化粧品など多様な柚子製品を生産している。
村民の約 1 割を占める約 90 名が柚子関連の仕事をして
いる。
しかし、馬路村の人口減少や少子高齢化の進行が止
まったわけではなく、人口は平成 26 年時点で 900 人
にまで減少している。一方で柚子や柚子加工品の需要は
年々増加しており、それに対応するための生産体制の拡
充と、働き手としての若年層の確保が課題となっている。

インタビュー:伊東 和哉 氏(営農販売課商品企画営業係/馬路村農協)

馬路村農協
営農販売課商品企画営業係
伊東 和哉 氏