地域の農業を支え雇用を生み出す島のジャム屋(山口県周防大島町)株式会社瀬戸内ジャムズガーデン|地域活性化100

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地域の農業を支え雇用を生み出す島のジャム屋
株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
山口県周防大島町

山口県周防大島町の地域の概要

周防大島町は、山口県の東南部に位置し、瀬戸内海に浮かぶ島では淡路島・小豆島に次いで 3 番目に大きな
面積を有し、本土とは大島大橋でつながっている。瀬戸内の温暖な気候に恵まれた柑橘類やサツマイモの産地で
あるとともに、釣り人や夏季シーズンの海水浴などの観光地でもあり、山口県・広島県をはじめ多くの観光客が
訪れている。人口は 2 万人弱で高齢化率は 50% に迫っている一方、官民が協力して定住促進を図る周防大島町
定住促進協議会の立ち上げや島暮らし希望者が島で自活している人と面会できる「無料島人紹介所」などの定住
促進の取り組みも盛んであり、近年では田舎暮らしを求めて都市部から周防大島へ移住する人が増えている。

取り組みの概要:地域の農業を支え雇用を生み出す島のジャム屋

瀬戸内ジャムズガーデンが開業したのは平成 15 年の秋。代表取締役の松嶋氏は新婚旅行先のパリの小さなジャ
ム屋に魅了され、以降電力会社に勤めながらジャム屋の創業を目指した。事業計画を作成し、家族の理解と協力
を得ながら、松嶋氏の奥さんである智明さんの実家がある周防大島に開業することとなった。山口県一の生産量
を誇る柑橘類をはじめその他の果実類の生産も盛んであることも周防大島でのジャム屋開業の決め手となった。
当初は、会社勤めを続けていた松嶋氏に代わり、智明さんが観光シーズンである夏季限定でジャムづくりと販売
を手掛けていた。島の食材を使ったジャム屋の話は少しずつ口コミで広がり、リピート客も確保でき、毎年売り
上げも増加していった。平成 19 年からは、松嶋氏が勤めていた会社を退職し、周防大島へ完全移住して瀬戸内ジャ
ムズガーデンの通年営業を開始した。
通年営業を開始した初年度、夏季は観光客も多く売り上げも順調であったが、冬季はほとんど客が訪れないと
いう課題に直面した。そのようなとき、知り合いの農家から秋に収穫される島の特産品であるサツマイモ(東和
金時)の差し入れをもらったことから着想を得て、秋冬限定の新商品の開発に着手し、ジャムごとパンを焼いて
食べる「焼きジャム」を開発・シリーズ化した。この商品が各種メディアに取り上げられ、またジャムと果実を
セットで届ける「ジャム屋の季節便」も顧客に好評を得られ、冬場の定番商品として定着している。
通年営業を開始した平成 19 年には 1 万 5 千本程度であったジャムの年間生産ビン数は、平成 25 年には 10
万本にまで拡大しており、契約農家は 8 軒から 52 軒、従
業員数は 4 名から 22 名にまで増えている。そのうち 3 人
は関東から移住してきた若者であり、島の雇用の受け皿
となっているとともに都市部からの移住希望者に対して 6
次産業化の視点を学ぶ場としての位置づけも考えており、
移住促進にも寄与している。
子どもたちが都会へ出て過疎高齢化が進んできたのは、
基幹産業である農業に元気がなくなってきたことが原因の
ひとつでもあると考え、ジャムズガーデンでは農作物を高
く買い取ることで地元の農家に利益が回っていく仕組みを
作ることを心がけている。また、市場出荷用では酸味が強
くてジャムに適さないカボスを、12 月ごろまで延長して
育ることでジャムに合ったまろやかな状態にしてもらうな
ど、ジャム専用の農作物を生産してもらうことで安定した
収入が得られるような関係性を築きつつある。さらに、ブ
ルーベリーやアンズなどジャムの材料で島にないものにつ
いては、自分たちで栽培を行うといった活動も行っている。

インタビュー:松嶋 匡史 氏(株式会社ジャムズガーデン 代表取締役)「ジャムづくりを通じて島の農業を支える」

ジャムづくりを通じて島の農業を支える
松嶋 匡史 氏
株式会社ジャムズガーデン 代表取締役
◯果物の生産地でジャムづくりを行うということ
添加物を使わないジャムをつくるということにこだわった結果、果物の旬の瞬間を逃さないよう生産者の横で
ジャムづくりを行うことが最適であることに気付いた。奥さんの智明さんの故郷であり柑橘類の生産が盛んな周防
大島は、そういった意味でも最適な土地であった。
◯共感を生む商品づくり
この島のこのお店にきて、ここにある風景や空気、そしてどのようなスタッフがどのような果物を使ってジャム
をつくっているか、といった様子を直に感じてもらいたい。そのため、直営店・カフェ、果樹園体験事業を行って
おり、ジャムづくりの現場を見てストーリーを感じてもらうことで、本当に共感を得られる商品をつくることがで
きている。
◯地元農家に利益が回るしくみ
周防大島の主産業の一つである農業は、現状として生計を立てていくことが難しく、自分の子どもにミカン農家
を継がせることもできず、結果、過疎高齢化が進展している。そこで、農家にジャム専用として果樹を育ててもら
うことで付加価値をつけ、市場価格より高く買い取ることで農家に利益が回るようにしている。例えば、カボスは
従来 9 月~ 10 月ごろに緑の状態で市場出荷されるが、12 月ごろに完熟したカボスの方が、酸味がまろやかにな
りジャムの原料としては適しているため、カボス農家とはマーマレード専用のカボス栽培の取引を行い、市場より
高値で買い取っている。原材料づくりからこだわったマーマレードということで商品のブランド力アップにもつな
がるといった相乗効果も得られている。
◯島に同じシステムの事業体が生まれるための土壌をつくる
島全体のブランド力があがり、農家にも利益が回っていく仕組みをつくりたい。そのためには、ジャムズガーデ
ンだけでは実現が難しいことから、地元の産物を使って、地元の商品をつくり、地元の雇用を拡げるといった同じ
ような志をもった事業体を増やす必要がある。現時点では、農業や 6 次産業化に興味がある若者を雇用し、働き
ながらジャムズガーデンのビジネスモデルを学んでもらうなど、人材育成にも積極的に取り組んでいる。