葉っぱビジネス。プロデューサーの重要性(徳島県上勝町)株式会社いろどり|地域活性化100

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葉っぱビジネス。プロデューサーの重要性
株式会社いろどり
徳島県上勝町

徳島県上勝町の地域の概要

徳島県上勝町は、徳島市中心部から車で約 1 時間。標高 100m から 700m の間に大小約 50 の集落が点在している。
人口は昭和 30 年の 6,265 人をピークに平成 25 年には 1,840 名 863 世帯にまで減少。高齢者比率は 49.57% で
過疎と高齢化が進む。総面積の 85.4%を山林が占め、そのうち 83%が杉を主体とした人工林で耕地はわずか 1.9%
と狭く、山腹の斜面に階段状の田畑がある。現在は葉っぱビジネスで注目される上勝町だが、以前の主産業は木材
とわずかな耕地で栽培されるみかんであった。高度成長期において木材は外材との競争、みかんは生産過剰による
値崩れで窮地に立たされていた。その上、昭和 56 年の異常寒波によりみかんのほとんどが死滅した。そうした危
機を乗り越え、町内の山にあった「葉っぱ」という新しい地域資源の発掘によるビジネスを展開。全国有数の農商
工連携による地域活性化モデルとなっている町でもある。

取り組みの概要:葉っぱビジネス。プロデューサーの重要性

「いろどり」は当時地元農協の職員であった横石知二氏 ( 現・
代表取締役社⻑ ) が中心となって昭和 62 年にスタート。平成 11
年には第三セクター方式(資本金 1,000 万円のうち町が 700 万円、
残り 300 万円を株式会社いろどりが出資)。当時は町長が社長と
なり中山間地のどこにでもある葉っぱを地域資源として活用し、
高齢者を中心とした農家が都市部の料亭・ホテル・レストラン等
に料理の「つまもの」として使用される葉っぱや草花を栽培して
出荷する事業をはじめた。
昭和 63 年に数件の農家から始まり約 160 万円だった売り上げ
は、平成 15 年には 2 億円を超え、現在は 180 軒を超える農家が
参加して 5 億円を突破。現在「つまもの」のは 320 種類以上あり、
年間を通して様々な葉っぱを栽培し出荷する。「つまもの」の事
業は、現在全国シェアの約 8 割を占める。
事業の仕組みは、JA の発注に基づいて各農家が商品を受注、
上勝の山に自生する葉っぱのほかに、各農家がそれぞれに工夫を
してビニルハウス等で栽培している葉っぱを収穫、各家庭でパッ
ク詰めを行い、集荷場に納品する。
特徴的なのは平成 10 年に、当時の通産省の公募事業を利用し
1 億 6,000 万円を投じて独自に導入した「上勝情報ネットワーク」
という IT システムである。高齢者でも扱うことができる専用ブ
ラウザや入力装置の開発も行い、当時、100 軒を超える農家それ
ぞれに 20 万円を超えるパソコンを導入。このシステムは、コン
ビニエンスストアの POS システムを参考に開発され、商品にバー
コードをつけて出荷情報を管理。日々変動する「つまもの」の市
場価格・出荷量・売行・単価・翌日の目標数量等、市況
状況を農家に知らせ、農家はそれをもとに収穫や生産計
画を行うことができる。また、組合員全員の日々の売上、
累計売上が順位表示されるようになっており、農家間の
競争を促す仕組みになっており、高齢者が多い農家のや
る気を喚起している。
「葉っぱビジネス」で全国的に有名になったことで、
移住者増加などの効果も生まれている。インターンシッ
プとして町内の企業や農家で平成 22 年から平成 25 年
までに 500 名近くを受入。そのうちの約 20 名が町内に
移住した。葉っぱビジネス成功までのストーリーは平成
24 年には『人生、いろどり』として映画化もされ、全
国で公開された。

インタビュー:横石 知二 氏(株式会社いろどり 代表取締役社長)「成功の要因はプロデューサーの存在と仕組みづくり」

成功の要因はプロデューサーの存在と仕組みづくり
横石 知二 氏
株式会社いろどり 代表取締役社長
上勝町と同じことが他の地域にもできるのか。メディア露出の増加等に伴って、上勝町には毎年多くの人が視
察に訪れる。中には視察をきっかけとして成功したところも多くあるが、成功したところは「葉っぱ」を真似た
ところではなかった。成功した地域の共通点は「上勝町の仕組みを真似たところではなく、上勝町の取り組みを
見たことで地域住民自らが「頑張ってみよう」と再起したところだった」と横石氏は振り返る。上勝町を見たこ
とで、自分たちも頑張れるという前向きな気持ちで改めて自分たちの足元を見ると、それまで気づかなかった「資
源」を発見することが出来たという事例が多い。「仕組みを真似ることはできないと思うが、高齢者までもがイ
キイキと仕事をしている風景を見て自分たちにもできると思ってもらうことが上勝の役割」。
中山間地域で新産業を作るためにはプロジェクトをまとめる「プロデューサー」の存在と、参加するメンバー
全員が役割を担う「仕組み」をつくることが重要。しかし、必ずしも各地域にプロデューサー(または予備軍と
なる人材)がいるわけではない。全国的な地域活性のためには、各地域と大学が連携して「地域プロデューサー」
育成のための実践型研修をやる等の仕組みを国レベルで仕掛けていく必要がある。同時に、地域にプロデューサー
がいないのであれば、外から受け入れる必要があり、地域側にも受け入れる仕組みを作っていくことである。外
からのやる気のある人材と、中をまとめることが出来る人材が手を組むことが地域活性のためには重要である。
最近、騒がれている「消滅集落」という話は、「何もしなかったら消えるよ」という地域への警告だと捉えて
いる。上勝町も例外ではなく、高齢化の比率が約 50%という町の年齢別人口構成比から見ても、仮に「いろどり」
の事業が成功したとしても必ずどこかで落ち目がくる。横石氏は、それを「町から小中学校がなくなるとき」だ
と語り、現在の上勝町の良さを失わずに次の世代につなげていくことが出来る町を目指しているという。人口は
2500 人程でも、一定数の若い家族と子供がいれば、小中学校も維持することが可能になる。
今、横石氏は「いろどり山」という次の構想を描いている。これは高度経済成長時代に人工林に変わってしまっ
た上勝の山を植樹によって豊かな自然林に戻していくというものである。上勝本来の豊かな自然を取り戻し、住
民に「この町で暮らすことの幸せ」を感じてもらうことが理想だそうだ。「私の最後の仕事は〝はなさかじいさん〟
だ」。今はまだ人工林が生い茂る山を見上げ、横石氏は目を細める。