地域の農産物を通して、食文化とライフスタイルを発信する(青森県三戸町)ノースビレッジ合同会社|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域産業の変革>地域産業を変える
地域の農産物を通して、食文化とライフスタイルを発信する
ノースビレッジ合同会社
青森県三戸町

青森県三戸町の地域の概要

青森県三戸町は岩手県との県境に位置する。平成 22 年時点の人口は約 11,000 人の町であり、昭和 30 年には
16,000 人あまりだったが、40 年間で 3 分の 2 にまで減少している。主な産業は農業と商業で、農業では葉タバ
コの主要産地であり、米、リンゴ、野菜なども生産されている。

取り組みの概要:地域の農産物を通して、食文化とライフスタイルを発信する

ノースビレッジは、青森県内で生産した希少価値の高
い農作物や、通常の流通ルートでは販売することができ
ない規格外野菜等を、主に東京を中心とした都市部の飲
食店に対して業務用食材として提供しているほか、野菜
の詰め合わせセットのオンライン直売を行うなど、これ
までの流通の仕組みでは販売が難しかった農産物を売る
仕組みを作っている。
他にも、地元産食材を活用した直営レストランの運営
を通して、地元食材を食文化と共に地域内外に発信する
ための取り組みを行っている。さらに、都市部に住む女
性が空き時間と空きスペースを利用して、青森の野菜を
売ることができるサテライト店舗「ひだまりマルシェ」
によって女性の新しい働き方を提案するなどの取り組み
も始めている。
ノースビレッジの設立は 2010 年。代表の栗谷川氏が
地元・三戸の町の衰退を危惧し、地域の基幹産業である
農業の振興を試みたことにはじまる。通常の流通に乗せ
ることができない少量生産野菜や、廃棄されていた規格
外野菜を販売することで地元農業の振興を目指した。
ノースビレッジが最初に手掛けたのは、三戸町の農家
で栽培されていた通常の 2 〜 3 倍の甘みがある高糖度
のトマトだった。近年ではネット通販による産地直売が
多いが、ネット通販では認知されて軌道に乗るまでに時
間を要するため、栗谷川氏自身がトマトを持って首都圏
の飲食店を回って営業をした。
こうした努力の結果、徐々に取引先を増やし、首都圏
のレストラン約 30 店舗に対して野菜や果物を卸すまで
になった。これを支える契約農家数も 15 軒にまで増加。
ノースビレッジとの取引で数百万円の収入を得ている農家
もある。農家にとっても自分たちの生産物がどこで使われ
るのかが見えるようになったことで、新しい作物に挑戦す
るなど、農家の意識にも大きな変化が生まれている。ノー
スビレッジは、個々では直接に繋がる事が難しい「首都圏
のレストラン」と「青森の農家」という両者のニーズを聞
き、仲介するという大きな役割を果たしている。
2013 年からは直営レストラン「農園キッチン」を開店。
地元で採れた農産物を、ビュッフェスタイルで提供し、夏
季や紅葉シーズンなどの繁忙期には 11 時から 15 時の 4
時間で約 200 人以上が来店する日もあるという盛況であ
る。2013 年には 7 月〜 11 月の営業期間中に約 6,500 人
が来店した。(2014 年は 7,600 人)
このレストランのねらいは「地元野菜を使ったおいしい
料理」を提供することだけではない。ここで作られる料理
の全ては家庭にもある一般的な調味料だけを使用して調理
されており、特殊な調理法や道具を用いていない。これは
レストランの料理に魅力を感じた客が、家に帰ってからも
地元産野菜を使って同じものを作ってもらうことを狙った
ものである。レストランで消費される地元産野菜量は微々
たるものだが、レストランが発信基地となって「地域の食
文化そのもの」を発信することで、地域の食文化の底上げ
によって、地元産業の活性化を行いたいという狙いがある。
ほかにも「ひだまりマルシェ」という取り組みでは、青
森県内に限らず、食に関する資格(野菜ソムリエ、フード
コーディネーター、食生活アドバイザー等)を所持する女
性、食のプロとして活躍する女性など「食」への関心が高
い女性を青森の農産物の魅力を伝える「アンバサダー」に
任命し、青森県産の旬の農産物や農産物加工品を仕入れて、
住まいの地域で販売してもらうものである。これは、アン
バサダーを通して、青森県産野菜と食文化の魅力を広く伝
える「農園キッチンのサテライト」としての役割を担って
いると同時に、子育てや家事の間の時間でもできるように
工夫されていることから女性にとって理想的な「ライフ
ワークバランス」を確立させることも目的としている。
ノースビレッジの一連の取り組みにおいて特徴的なの
は、農産物を売るだけにとどまらず、青森県の農産物を利
用した食文化そのものや、安全安心な野菜が食卓に並ぶ豊
かなライフスタイルそのものを伝えることで、結果として
農産物の販売増加につなげることを狙っている点である。
ブランド野菜や、産地直送という言葉が珍しくなくなっ
た今、農産物等によってもたらされる食文化や生活の豊か
さをも作り出すことで差別化を図ろうとしている。

インタビュー:栗谷川 柳子 氏(代表/ノースビレッジ合同会社)

ノースビレッジ合同会社
代表
栗谷川 柳子 氏