「農業の常識」を変える農業生産法人(宮崎県都城市)農業生産法人有限会社新福青果|地域活性化100

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「農業の常識」を変える農業生産法人
農業生産法人有限会社新福青果
宮崎県都城市

宮崎県都城市の地域の概要

宮崎県は総面積の約 1 割にあたる 709㎢が農地として利用されており、平成 25 年の農業産出額は 3,213 億円で
全国 6 位である。特に新福青果が立地する都城市は畜産をはじめとして、野菜の生産などが盛んな地域であるが、
農業従事者の高齢化が課題となっており、生産者のうち 65 歳以上が約 6 割を占める。後継者がいないことを理由
に農業を辞める生産者も多く、休耕地や耕作放棄地の増加も問題となっている。

取り組みの概要:「農業の常識」を変える農業生産法人

就農者の高齢化や、農地法による制約などの影響により、平成 25 年の荒廃農地面積(耕作放棄地含む)は、全
国で約 27.3 万 ha( 推計値 農林水産省 平成 25 年 ) 存在し国内農業の低迷は深刻さを増している。今後も農業の
後継者不足はますます進行することが予測されており、耕作放棄地は今後も増加することが予想される。
そうした中で、宮崎県都城市の新福青果は、これまでの農業の常識を覆す様々な仕掛けによって、多くの若者を
雇用し、地域の耕作放棄地を次々と蘇らせ、地域の農業の活性化に成功している。
新福青果は昭和 51 年、脱サラをして地元に帰ってきた社長の新福が創業。試行錯誤で野菜作りを始め、昭和
58 年からは地元の生協(生活協同組合)へ野菜の供給を開始、その後も小売店との契約生産を進めるなど、独自
の販売ルートを作って成長してきた。現在、直営農場は都城市内の 350 箇所(60ha)と近隣の西都市 2 箇所(24ha)
に加え、契約農場 670 箇所という広大な農地で、ゴボウ、里芋等の根菜類から、キャベツ、ほうれん草、ピーマ
ンなどを生産しており、都城ブランドの青果や加工品として全国の 100 社を超える大手小売店等に納入している
全国有数の農業生産法人となった。
さらに近年ではアジアを中心とした海外の百貨店や高級スーパーへの輸出も行っていると同時に、台湾に
100ha の農地を得て、日本式農業のノウハウを生かし、サツマイモなどの栽培を始めている。
地方の一農家に過ぎなかった新福青果が成長した背景には、天候等に左右されることが多い農業では行われてい
なかった「生産計画・管理」「コストカット」等の考え方を新福が菓子メーカーの会社員だった経験を生かして積
極的に取り入れたことにある。
他にも、より付加価値の高い野菜作りを目指し、平成 3 年には有機栽培に取り組み始め、平成 10 年からは「カッ
ト野菜加工場」を建設して野菜の栽培から加工までをワンストップで行うことができる仕組みを整えた。これら、
農業に様々な斬新な仕組みを取り入れて成長をしてきた新福青果だが、農業の常識を大きく変えたものとして「働
きかたの変革」と「IT 技術の導入」がある。
若い農業従事者が減少する原因の一つに、農業の技術が継承されないという問題がある。地域によっても異なる
農業技術の多くが熟練農業者の経験や勘に頼る部分が大きく属人的している。そうした農業技術を IT の活用によっ
てデータ化し、農業の経験がない若年層でも農業ができるようにした。平成 8 年にパソコンを使った作業日報の
記帳を開始。畑ごとのコストを計算した企業経営の手法を取り入れた。
平成 13 年にはタブレット端末機を導入し、畑に居ながらして作業内容、使用した肥料・農薬の入力を可能にした。
また、畑ごとにセンサーを設置し、気温や湿度に加えて地中温度や水分量、肥料濃度等のデータも自動に蓄積され
る仕組みを構築した。こうしたデータをサーバーに蓄積
し共有することで、それまで属人化していた農業技術を
誰もが扱うことのできる情報にした。最近では農地にカ
メラを設置して、遠隔操作で本社に居ながらして畑の様
子を確認することができるようになっている。
また、こうした生産データは生産の効率化のみならず、
生産物のトレーサビリティにも活用されている。また、
畑単位の原価計算も可能となり、農業に収支管理という
概念を持ち込むことにも成功した。
こうした IT による情報管理によって可能になったの
が農業における「働き方」の変革である。天候に左右さ
れ、決まった休日がなく、安定した収入を得ることがで
きないことが常識だった農業に、会社員のような固定給
制度、定期的な休日、社会保険への加入という画期的な
働き方をもたらした。
当初から農業における働き方に疑問を持ち企業的な農
業経営を目指していたが、平成 7 年の農業生産法人化
時には農業未経験の若者 12 人を正社員として雇用。現
在は 54 名の従業員を雇用するまでに拡大している。障
害者の雇用創出にも力を入れており、現在 9 つの社会
福祉法人から年間 120 名の障害者を臨時の従業員とし
て受け入れている。
さらに、企業的農業経営を実践し、生産から販売まで
を一手に担うことができる農家を全国に増やす「農業の
フランチャイズ化」も積極的に行っており、新福の元で
農業経営を学んだ若者たち 45 名が全国各地で農場を営
んでいる。
農業の世界に斬新な仕組みを導入し、様々な変革をも
たらしてきた新福青果だが、今後は「農業の 24 時間化」
や「女性の活用」を目指す。農地をさらに集約化して全
自動の農業機械を導入することで、これまで日中にしか
行えなかった農作業を、夜間に無人で行うことが可能に
なり、生産効率の向上が可能となると予想される。また、
更なる機械化の推進で、これまでは難しかった農業への
女性の参入も可能となることが期待される。

インタビュー:新福 秀秋 氏(代表取締役社長/農業生産法人有限会社新福青果)

農業生産法人有限会社新福青果
代表取締役社長
新福 秀秋 氏