日本の農業を「儲かる農業」へ(長野県御代田町)農業生産法人 有限会社トップリバー|地域活性化100

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日本の農業を「儲かる農業」へ
農業生産法人 有限会社トップリバー
長野県御代田町

長野県御代田町の地域の概要

有限会社トップリバーは、長野県御代田町のほか、千葉県袖ケ浦市や静岡県浜松市、磐田市等に自社農場を持
つなど、取り組みは全国に広がっている。取り組み背景には昨今の日本の農業に関する危機感がある。現在の日
本の農家数は減少の一途を辿っており、30 年代には 1200 万世帯であったが、現在は 250 万世帯と 5 分の 1 に
まで減少している。一方で農業技術の発達もあり、総生産額は 5000 万トン前後と大きく変化はしていない。
内訳を見ると、農業だけで生計を立てている専業農家の割合は 27.7%で、第 1 種、2 種を合わせた兼業農家
は 72.3%である(「世界農林業センサス」農林水産省 平成 22 年)。背景には日本の農家 1 戸あたりの平均的
な耕作面積は1ha(EU 諸国では 16.9ha、アメリカ 16.9ha、オーストラリア 3479ha「食料・農村白書」農林
水産省 平成 20 年)と小さいために効率化が難しく、農業を「生業」として成立させることが難しいという現
状があり、こうした農家を永く支えてきたのが各種の補助金制度であった。農業にも国際競争が求められる今、
日本の農業にも経営的視点を入れてより効率化・高収益化する必要があり、そうした課題に対して農業「経営者」
の人材育成や、法人の農業参入等の支援を行っているのが有限会社トップリバーである。

取り組みの概要:日本の農業を「儲かる農業」へ

トップリバーは農業を「儲かる産業」に育てることを目指している。同社の取り組みは、農業生産物の生産と
販売という農業生産法人本来の内容から、農業従事者の育成指導、企業の農業参入や農業生産法人の立上げと経
営サポートに至るまで日本の農業全体の底上げを狙った活動を行っている。
農産物の生産・販売では、自社生産の他に契約農家との栽培委託を行っている。同社の管理農地と契約農家の
土地約 100ha でレタスやキャベツなどの野菜を中心に生産している。生産物の安全性の追及や、トレーサビリ
ティーの導入はもちろんのこと、同社が農業で利益を上げることが出来るのには幾つかの理由がある。
1つは既存の市場を通じた出荷ではなく、外食、小売チェーン、加工業者などとの間に直接販路を拓き、直接
取引をしている点である。取引先は 70 社ほどで、個々の取引先のニーズに合わせた栽培を行う代わりに、市場
価格に関わらず一定価格での買取契約をするなど、天候に左右されやすい農業の欠点を補って安定収益を得てい
る。納入数も事前に決まるため、生産計画の概念がなかった農業に「生産計画」を立てることも可能となった。
もう一つの特徴は生産以上に「営業」に力を入れている点である。同社では常に数名の営業担当社員が、顧客
と生産現場と調整役として活躍している。さらには、同社は自前の農場を持っておらず、全ての自社農場は農家
が耕作を行わなくなった「遊休農地」を活用している。農器具にも中古を使用するなど可能な部分は徹底したコ
ストカットを行っている。こうした工夫の結果、同社は平成 12 年の設立から 10 年後の平成 22 年には売り上げ
は 12 億円に達している。
同社では儲かる農業を担うための人材育成も行っている。全国から募集した研修生は約 5 年間、同社の自社農
場(または契約農場)で研修を行い、「農作物の生産」、「農産物の営業」、「組織マネジメント」等について習得す
る。就農者ではなく「農業経営者」を育成し独立させることを目指す。現在の研修生(正社員)は 30 名程で、そ
の半数が大学卒の高学歴な若者であり、皆は実家が農家等でない全くの素人である。研修生は全て正社員であり給
与 15 万円以上の他に各種手当や社会保険等も完備。成果によっては高額の賞与が支払われる。やる気があり、か
つ条件が合えば 2 年目から一農場の現場監督責任者である「農場長」になることができるなど挑戦するための機
会も用意されている。
この研修制度には、毎年 50 名を超える希望者があるが、長期研修前の短期研修を終えた段階で残るのは 5 名程
度であり農業に対する厳しさも学ぶ。この他に、農作業を行なうアルバイトとして 50 〜 70 歳の地元住民 50 名ほ
どを雇用しており地域雇用の創出にも寄与している。同制度を利用して、2000 〜 13 年の 13 年間で 19 名が「農
業マネージャー」として同社から独立・起業。日本各地で「農業経営」を行っており、中には 8 億円を売り上げ
る若者もいる。このほかにも、農業経営者に対するコンサルティングなどを行って、儲かる農業の仕組みを広めて
いく役割を担う「農業コーディネーター」の育成も行っている。
現在トップリバーでは、県内外を問わず、その地域の行政・JAと手を組み、3組織で地域農業の活性化に力を
入れている。これは単なるトップリバーの売り上げアップや規模拡大ではなく、地域の方々にトップリバーのDN
Aを導入し地域にあった儲かる農業経営の普及に努めている。
内容は主に「農地確保、生産技術の取得、販路の確保、農業経営ノウハウの習得」などで、農業に必要なノウハ
ウの一切を指導する。各地に区画分けされた農地を用意、そこに研修を受ける各企業の担当者がアパートに入居す
るように入る仕組みになっており、同社ではこれを「アパート型農場」と呼ぶ。そこで実際の農場経営を行いなが
ら「儲かる農業」について実習を行う。収穫した農作物は同社が買取・販売を行っている。

インタビュー:嶋崎 秀樹 氏(農業生産法人 有限会社トップリバー 代表取締役)「優秀な「農業経営者」が日本の農業を救う」

優秀な「農業経営者」が日本の農業を救う
嶋崎 秀樹 氏
農業生産法人 有限会社トップリバー 代表取締役
嶋崎氏が追求する「儲かる農業」とは、単に会社として農業で収益を上げるということだけではない。
まず、「農」と「農業」を明確に区別する必要がある。土いじりを趣味としてやるのは「農」であり、「農」を「生
業」として行うのが「農業」である。さらには、経営の視点を持って「農業」をすることによって、収益を上げる
ことが「儲かる農業」である。これまでの日本の農業政策では、「農」と「農業」が同様に扱われてしまっており、
共に手厚い保護がなされてきたため、日本では「農業」が育たなかったという背景がある。
嶋崎氏はそうした日本の農業の仕組みを変えるために、「農業経営」ができる「農業経営者」を育てることを目
指している。農業従事者の高齢化や人手不足が言われているが、本当に必要なことは若者が農地に入って農作業を
することではなく、日本でも指折りの大学で経営を学んだような優秀な若者が農業の世界に入って農業経営を学び、
優れた「農業経営者」となることだ。
しかし、人材を育成することはそれを行う法人にとっても大きな負担でもあり、容易なことではない。国レベル
で、農業の未来を担う人材育成に力を入れる必要がある。多くの「農業経営者」を育て、日本全国で「儲かる農業」
を展開することによって日本の農業を再建するという目標に向かって、嶋崎氏は走り続けている。