地域による地域のための「地域密着型商社」(青森県八戸市)株式会社ファーストインターナショナル|地域活性化100

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地域による地域のための「地域密着型商社」
株式会社ファーストインターナショナル
青森県八戸市

青森県八戸市の地域の概要

八戸市は都市圏全体で約 33 万人を擁する南部地方の中心都市。港町と、工業都市の 2 つの性格を持ち、臨海
部には大規模な八戸港をはじめ、工業港、漁港、商業港が整備されており、港周辺には大規模な工業地帯が形成
されている。全国屈指の漁港施設を有する水産都市であり、北東北屈指の工業都市でもある。平成 6 年には東
北初の国際航路が開設され、週 2 便の中国航路、週 1 便の東南アジア航路、週 0.2 便の北米航路が就航。東北
地方の国際航路を有する港湾では、塩釜港、秋田港に次いで 3 番目の航路数である。しかし、昭和 60 年代のピー
クには 80 万トンを超えていた水産物(イカや鯖など)の水揚げ量は近年では 10 万トン前後にまで落ち込んで
いる。また、中心市街地には空店舗が目立つなど地域経済の衰退が進行している。人口も平成 7 年の約 25 万人
をピークに、平成 22 年には約 23 万 7,000 人と減少の一途をたどっている。

取り組みの概要:地域による地域のための「地域密着型商社」

株式会社ファーストインターナショナル(以下。ファーストインターナショナル)は「地域密着」商社として、
少量だが高価値の地域特産品を扱っており、現在はリンゴ、長芋、水産物などをアジア圏中心に輸出するほか、
北米からは木材、建材、食品、家具、水産品、雑貨など多種目を輸入している。現在の取扱商品の内容は、輸入
が 55%、輸出が 16%、国内取引が 29%である。
株式会社ファーストインターナショナルは、平成 6 年、八戸商工会議所に所属する地元企業の有志 35 社の出
資によって設立された。役員や株主には、地域の有力企業、水産加工業者、通関業者、地元の金融機関等が名を
連ねる。
設立のきっかけとなったのは、平成 6 年に八戸港にシンガポール、香港、台湾を結ぶコンテナ定期航路が開
設されたことだった。これを受けて、停滞していた地域経済の可能性を広げるために地元産品の輸出入を支援す
る商社を作ろうという地元の青年会議所のメンバーらが動き出した。
設立当初は、商社の事業経験がない事業者の集まりであったため困難を極めた。当初は東京の大手商社から経
験者を役員に招聘して商社業務を「いろは」から学びながらのスタートであった。
当初は仕入先や販売先の確保に苦慮したが、転機となったのは平成 14 年。台湾の WTO 加盟によって台湾の
青森リンゴ輸入枠制限が撤廃され、輸出高が飛躍的に増加したことだった。(それまでの台湾へのりんご輸出量
は約 1,500 トンであったが、規制が撤廃された 2003 年には 16,000 トンと 10 倍以上になった)。台湾で膨れ上
がるリンゴの需要に伴って輸出量も年々増加し続けた。その後も輸出先は香港、シンガポール、中国、タイ、さ
らにはロシアなどと各国に拡大している。
こうして、確実に地域の中で存在感を増している「地域密着型商社」だが、当初は、仕入れにも苦労をする状
態であった。輸出は規格化されたコンテナで行うために安定した量の確保が必要であった。そのために当初は津
軽地方の農協等からまとまった量の仕入れが中心であったが、平成 14 年の台湾進出をきっかけとして、近隣の
南部町でリンゴ農家を組織化した「南部町りんご台湾輸出組合」が組織された。この組織は南部町の農林商工課
が中心となっており、個々の農家が生産したリンゴを輸出可能な量にまとめる取組を開始した。
組織化をして農家がまとまることによって、安定した供給量を確保することが可能になり、それまで農家個々で
は不可能であった海外輸出という新たなマーケットの開拓をすることが可能になったのである。しかし、実際に輸
出をするためには、取引先との交渉や契約事務作業などの煩雑な作業があり容易なことではない。
それを可能にしたのが「地域密着型商社」としてのファーストインターナショナルの生産者に寄り添った地道な
活動である。それまで輸出の経験などない地域の生産者に密着し、輸出向け作物の選果方法から、箱のデザインに
至るまでを細かく指導した。さらには、海外の販売先との交渉や手続きなどを代行し、生産者が本業であるリンゴ
の生産に専念しながら輸出をできるようにした。こうして、独自の仕入れ先を確保することに成功したとともに、
農家にとっても輸出事業による増収をもたらした。
ファーストインターナショナルは地域の企業が中心となって立ち上げた企業であり、自治体の支援も受けている
ことから地域内における信用度が高く、農家や生産者にとっても安心して取引ができるという。さらには、地域の
自治体が応援をしていることで、海外の取引先に対しての信頼にも繋がっている。
この南部町のリンゴ輸出事業の成功がきっかけとなり、各地から様々な果樹等の海外輸出への協力依頼が来るよ
うになった。現在では八戸港に限定せず、東京や神戸などの国際港を利用するなど、より広域的に地域の農産物を
海外に輸出する取組を行っている。
数年前からは、これまでの取引関係を生かして海外のスーパーマーケットを借りて独自の「青森フェア」を開催
している。これまでも各地の自治体などが主催する見本市は数多く行われてきたが、仮にある生産物が海外企業か
ら注目をされたとしても、実際に輸出するためには複雑な交渉や手続き等が必要になり、また、大手の商社を介し
て輸出を行うためには一定の量を安定的に供給することが必要になるために、いい商品を作っていても輸出にまで
漕ぎ着ける事は困難であった。
しかし、ファーストインターナショナルが実施する「フェア」では、海外の顧客から商品が注目された場合にも、
ファーストインターナショナルが交渉や事務作業等の中間支援をすることによって実際の売買に結びつけることが
可能となった。
こうした地域密着型商社の存在は、地域内の雇用創出にも貢献している。現在、従業員は 7 名で、うち 6 名が
地元出身の語学に堪能な若者たちである。多くの場合、地方の優秀な若者は都市部に出て大学等で学び、そのまま
都市部の企業等に就職をしてしまうために、地域に残ることが少ないが、そうした背景には、地方に若者が身につ
けた知識やスキルを十分に活かすことのできる企業がなかったことがある。けれども、優れた語学力等を必要とす
る地域密着型商社のような企業が地域に育つことで、一度は地域を離れた若者たちの「地元で働きたい」という想
いの受け皿になることもできる。ファーストインターナショナルの年商は平成 17 年に 10 億円を突破し、平成 26
年の売り上げは約 14 億円を超える。小さな農家で作られたリンゴが海を渡ったように、「地域密着企業」にしか
出来ないことがあり、その存在感は地域においてさらに存在感を増している。

インタビュー:吉田 悦子 氏 (取締役ゼネラルマネージャー /株式会社ファーストインターナショナル)

株式会社ファーストインターナショナル
取締役ゼネラルマネージャー
吉田 悦子 氏