バイオプラントによる地域課題の解決と新たな地域産業の創出(北海道鹿追町)鹿追町農業振興課環境保全センター|地域活性化100

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バイオプラントによる地域課題の解決と新たな地域産業の創出
鹿追町農業振興課環境保全センター
北海道鹿追町

北海道鹿追町の地域の概要

鹿追町は北海道でも有数の穀倉地帯である十勝平野に位置し、畑作と酪農畜産を主産業とする純農村地帯である。人口は
約 6,000 人で、そのうち農家人口は約 1,200 人(農家戸数 237 戸、法人 23 戸)で、農地面積は 11,500ha と街全体の面
積の約 28%を占める。平成 22 年の農業粗産出額は約 161 億円で、うち酪農が 54%を占め、畑作が 25%、畜産が 21%と、
酪農が大部分を占める。約 240 戸ある農家のうち半分が酪農や畜産に携わっており、乳牛 19,000 頭、肉牛 11,000 頭と合
わせて 30,000 頭もの家畜が飼育されている。近年では、町内にある然別湖などの自然環境を生かしたグリーンツーリズム
も積極的に行われており、観光客数は年間 70 万人を超える。鹿追町における農業の特徴として、広大な農地を持つ農家が
多いため、全国に先駆けて農協を通して農作業の一部を外部に委託する「コントラクター事業」を早くから実施している。
地域の農協である JA 鹿追にはコントラクター事業を専門に行う部署もあり、常に専属職員による対応を行っている。鹿追
町に大規模経営の酪農家が多いのはこうした背景もある。
町内には自衛隊駐屯地もあることから、町内で第 3 次産業従事者(自衛隊関係者)も多く 57%になる。第一次産業が盛
んな町で、それに従事する人と、それとは全く無関係な第 3 次産業従事者が同じ地域に居住していることから、家畜の飼
育によってふん尿等から発生する臭気は住民の間で問題になっており、町はその対応を迫られていた。また、酪農家にとっ
ても大量に発生する家畜ふん尿の処理には莫大な費用がかかっており、大きな負担になっていた。

取り組みの概要:バイオプラントによる地域課題の解決と新たな地域産業の創出

鹿追町では、平成 19 年にバイオガスプラントを建設。地域の臭気問題の元となっていた家畜の糞尿処理を進めるとと
もに、それらを集めて微生物分解を行い、バイオガスを生成して発電を行う事業を進めている。
バイオガスプラントとは、家畜ふん尿や生ゴミなどを微生物に分解させることで発生するバイオガス(主成分はメタン約
60%、二酸化炭素約 40%、水)を生成する施設である、バイオガスをガスエンジンで燃焼させて発電することができ、発
電時に発生した余剰熱を温室栽培などにも利用できる。さらに、発酵後に発生する消化液は有機肥料として利用できる。
鹿追町のバイオガスプラントは平成 19 年に、町が国や県の補助を受けて約 17 億 4,500 万円を投じて建設された。主に、
バイオガスプラント(家畜ふん尿等を発酵させてバイオガスを生成する施設)、堆肥化プラント(家畜ふん尿等を発酵させ
て堆肥化する施設)、発電機(生成したバイオガスを燃やして発電する装置)、殺菌槽(発酵過程で発生した消化液を殺菌す
る装置)、スラリーストアー(消化液を貯蔵するタンク)等からなる集中方式プラントである。1 日の計画処理量は家畜ふ
ん尿が 85.8t(成牛 1,320 頭が排出するふん尿量に相当)と日本最大級の規模を誇る。
ここから発生する発電量は約 4,500kWh/ 日で一般家庭 450 戸分の電気使用量に相当。発電した電力の半分を施設内で利
用し、残りを売電して収益としている。さらに、メタンガスは、そのままガスとしての利用も可能で、現在、町では精製圧
縮してプロパンガスのように利用することも可能で、自動車の燃料などの新たな活用に向けて試験が行われている。
さらに、発酵過程で出来る消化液が良質な有機肥料として利用出来ることも、バイオガスのメリットである。この有機肥
料を利用することで、農家の費用削減にもつながる。平成 24 年度実績で 847ha の農地に 28,229 トンを散布した。町では
この消化液をプラントの敷地内に設置したタンクに貯蔵し、バイオプラント利用組合に所属している 12 戸の農家などに職
員が専用散布車を使って散布している。農家からは消化液 1 トンあたり散布作業代 500 円、肥料代 150 円を徴収しており、
消化液散布事業での収益は平成 24 年には 1,400 万円となっており、プラント運営を支えている。
さらに、発電時に生じた予熱も有効に活用されており、隣接するビニールハウスではマンゴーなどの果物が試験栽培され
ているほか、地域に新しい資源を作ろうとする地元商工会が、「鹿追町産キャビア」の生産に向けてチョウザメの飼育を始
めている。
このプラントの運営状況であるが、現在は 12 戸の酪農家が参
加する「鹿追町バイオガスプラント利用組合」によって運営され
ている。この 12 戸は市街地を取り囲むように立地している酪農
家で、家畜ふん尿による臭気問題が最も顕在化していた。これら
の農家から、ふん尿処理の利用料として年間 12,340 円/頭を徴
収しているほか、消化液有機肥料の散布、消化液有機肥料の販売、
売電等から収入を得ている。
また、プラントの維持運営には多額のランニングコストが掛か
るが、施設や機械の業者やメーカーと「性能保証発注(建物の具
体的な仕様を決めず、発注者が求める性能から逆算的に条件を設
定して発注する方法)」を導入することで、組合が負担する一定
の維持管理コストを設定して、これを上回る場合にはその分を業
者等が負担する契約を結んでいる。このことで計画的な運営が可
能になっている。
年度別収支では、稼働開始の平成 19 年が収入 2,043 万円・支
出 1,779 万円と 263 万円の黒字、以降も黒字経営を続けており、
平 成 25 年 は 収 入 9,076 万 円・ 支 出 5,926 万 円 で 3,150 万 円 の
黒字となった。稼働以来の 5 年間で収入は約 3.6 倍まで上がっ
ているが、酪農家もプラントの効果によって経営が安定し、経営
規模を拡大したことで、プラントに参加している酪農家件数は増
えていないが、利用料金収入はほぼ倍増した。このことに加えて、
平成 25 年度より再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象
施設として認証を受けたことにより、売電収入も増加した。これ
らの収益は、町の基金として積み立てられている。
現在、このプラントの成功を受けて、新たに町内の他地区にさ
らに大型の「第二バイオガスプラント」を建設する計画が進んで
いる。また、消化液有機肥料の活用による農家の肥料費削減効果
は明らかになっており、今後、消化液有機肥料の散布量が増加す
ることによる地域全体の農畜産業の推進も期待される。
さらに、長年の悩みであった家畜ふん尿の処理と、臭気の問題
がプラントによって解決されたことで、組合に参加している酪農
家の中には規模を拡大したところや、一度は地域を離れた後継者
が帰ってきたという事例も生まれており、酪農業経営の発展と安
定化にも寄与している。

インタビュー:井上 竜一 氏(農業振興課環境保全センター/)

井上 竜一 氏
農業振興課環境保全センター