オンリーワンの町の誇りを!「A 級グルメ」のまちづくり(島根県邑南町)邑南町/邑南町観光協会|地域活性化100

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オンリーワンの町の誇りを!「A 級グルメ」のまちづくり
邑南町/邑南町観光協会
島根県邑南町

島根県邑南町の地域の概要

邑南町は、島根県の中央に位置し、平成 16 年に旧羽須美村、旧瑞穂町、旧石見町が合併して邑南町となった。
面積は 419.2㎢で東京都特別区のおよそ 3 分の 2 にあたる広大な地域を有し、中山間地に代表的な盆地で年間の
降雪量は 200 センチを超える豪雪地帯である。邑南町(現在の邑南町に該当する地域)の人口は昭和 45 年には約
18,000 人いたが、平成 22 年には 12,000 人にまで減少。町内には西日本有数のスキー場もあり、冬は広島・九州
方面から多くのスキー客が訪れる。

取り組みの概要:オンリーワンの町の誇りを!「A 級グルメ」のまちづくり

近年、全国の自治体では地域振興策として「B級グルメ」を全面に押し出している自治体が多い中、邑南町は邑
南町民が丹精こめて生産した農林産物や家畜と、それを使った加工品を活用した「A 級グルメ」のまちづくりを行っ
ている。「ここでしか味わえない食や体験= A 級グルメ」というコンセプトのもと、町と観光協会が中心となって
本格的イタリアンレストランを運営しているほか、町の子供たちに食に興味を持ってもらう場をつくろうと「食の
学校」を開設するなど、町と観光協会が先導し、地域住民や移住者たちを巻き込んでの「食のまちづくり」を行っ
ている。
昭和 50 年代以降、各地で「一村一品運動」の機運が高まる中、多様な農産物を作っている農家が多い邑南町で
は町の「一品」を決めかねていた。そうした中の平成 22 年度、今後の町の産業振興を官民協働で行う「邑南町農
林商工等連携ビジョン」を策定し、町内で生産される高価値の農畜産物を使った「ここでしか 味わえない食や体験」
の提供による、地域ブランド構築・地域産業の活性化を目指して「A級グルメによる立町」を掲げた。これは町が
誇る食材を町内で加工・調理し、観光客を呼び込んで提供するところまでを町内で完結する「究極の 6 次産業化」
を目指すものである。5 年後の平成 28 年を目指して「①食と農の起業家 5 名輩出」「②観光入込客 100 万人」「③
UIJ ターン 200 名」と具体的数値目標も設定した。
邑南町ではこの以前から積極的な町内産物の販売促進を行ってきた。しかし、生産量の少なさがネックとなり、
大手のホテルや小売店との取引成立には至らなかった。そうした中の平成 17 年、ネット通販サイト「みずほスタ
イル」を開設。少量生産のデメリットを逆手にとり、「少量だが付加価値の高い産品」を消費者に直接販売し、首
都圏の消費者中心に評価を得るようになった。評判が高まるにつれて首都圏の高級スーパーやデパートとの取引も
成立、平成 20 年度の年間売上高は約 3,000 万円にのぼった。
さらには、島根県内一の売り上げを誇る町内の道の駅「産直市みずほ」でも販売も積極的に行っている。この直
売所は平成 16 年に「農家による農家の店」をコンセプトにスタート、生産者と直売所をつなぐ IT の積極的な導
入等により現在の売り上げは約 3 億円を超えるまでになった。
しかし、ネットショップや直売所等の取組は一部生産者と都市部の消費者の交流であり、町全体の活性化にまで
は広がっていなかった。そのため、平成 23 年「A級グルメのまちの拠点」を作ろうと、町と観光協会が協力して
運営し、地産地消率 95%を誇るイタリアンレストラン「ajikura」をオープン。本格的な料理人を呼び込むために、
町職員が地元産品を持って上京するなどの積極的な営業活動の結果、町の環境と食材に魅力を感じた料理人、ソム
リエ、パティシエらが UI ターンし「ajikura」の厨房で腕を振るっている。
彼らは「耕すシェフ」として、農業の知識もあるシェフを目
指して、地元農家と協力して食材を作るところからの挑戦をし
ている。「ajikura」はディナーで 5000 〜 8000 円と周辺飲食
店に対しても高価であるにもかかわらず、地域内をはじめ、京
阪神地区や関東地区からも客を集めている。レストラン内で使
用する食材の地産地消率は 95% を誇り、売り上げはオープン
1 年目から 2,500 万円を超えた。
また、レストランに「邑南町食の研究所」を併設し、地元食
材を活用したレシピ開発等の地元飲食店への提供、生産者と飲
食店とのマッチング、地元高校生と協力しての「スイーツプロ
ジェクト」等の様々な食に関する取組を展開し、売る・提供す
るにとどまらない「町全体の食文化の底上げ」に貢献している。
平成 26 年 3 月には、「100 年先の子供たちに伝える邑南町
の食文化」をコンセプトに「邑南町立食の学校」を設立。食の
プロを目指すコースから、子供向けの調理教室まで、様々な食
の学びを提供しており、A 級グルメの町を支える人材の育成に
も力を入れている。施設整備と人材教育の両輪による「A 級グ
ルメの町づくり」はさらに加速度を増している。
取り組み開始からの 23 年から現在にかけて、IU ターン者
を含む 9 店舗の飲食店が開店。料理評論家などの食に関する
仕事も持つ人が自然と集まってくる仕組みが生まれつつある。
ほかにも「地域おこし協力隊事業」を活用し、食材作り(農業)
や料理(シェフ)などのA級グルメの担い手として全国から募
集し、育成する取り組みも行っており現在 4 名の若者が邑南
町に入っている。こうした各種取り組みの結果、平成 23 年か
らの 3 年で UI ターン 128 人となり、社会動態人口は 20 人増加、
合計特殊出生率は 2.652 などの成果を生んでいる。
効果は地域内の各所に波及している。地元農家の中にも「少
量でも良いものをつくろう」という機運が高まり、有機農業に
関心を持つ農家が増加。これまでは作物を出荷するだけだった
が、自分たちの作ったものがどんな料理に使われるのかが見え
るようになったことで、作り手の中にもやりがいが生まれた。
現在、レストラン ajikura の提携農家は 20 軒を超えた。全国
に「特産品」が乱立する中、都市部との人材交流の中から、オ
ンリーワンの「町の誇り」を発見し、町をあげて育てていくこ
とで差別化に成功した事例である。

インタビュー:寺本 英仁 氏(邑南町観光協会/邑南町 商工観光課 観光振興係長)

邑南町 商工観光課 観光振興係長
邑南町観光協会
寺本 英仁 氏