地域資源を活かしたバイオマスタウン構想(秋田県小坂町)小坂町|地域活性化100

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地域資源を活かしたバイオマスタウン構想
小坂町
秋田県小坂町

秋田県小坂町の地域の概要

小坂町には、かつて日本三大銅山と呼ばれた小坂鉱山があり、明治から大正にかけては秋田第二の都市とも言われるほどの
人口を有し、秋田県で最初に電気が導入されたなど、鉱山の町として繁栄を極めた。最盛期であった大正時代の人口は 2 万
人以上で県下第 2 位の都市であった。しかし、昭和 60 年代に起こった鉱山の統廃合や閉山によって伴って人口は激減。小坂
町の人口減少率は昭和 30 年からの 35 年間で 50%と極めて高い。平成 22 年の人口は約 6,000 人で、過疎地域自立促進特別
措置法における「過疎地域」に認定されている。
そうした状況を脱しようと、鉱山技術を生かした環境リサイクル産業を推進する「エコタウン」と資源循環システム構築を
目指す「バイオマスタウン」等、環境問題へ先進的に取り組むことで地域活性化を図る動きが活発化した。かねてより、小坂
鉱山からは銅・鉛・亜鉛が混在した鉱石が産出されており、これを製錬する技術が長年かけて磨かれてきた。この高い技術を
生かして、他ではできない複雑な処理等を行うなど、貴金属のリサイクル事業における存在感を示している。
また、これに組み合わせ、「バイオマスタウン」の推進として町民参加型の資源循環地域内システム構築に向けた取り組み
も行われている。また、町内には、鉱山の町として栄えた時期に建てられた日本最古の現役木造芝居小屋である「康楽館」( 明
治 43 年築 ) や、木造 3 階建てでルネッサンス風外観のかつての鉱山事務所など、鉱山産業遺産群が多くありそれらを生かし
た観光振興も行われている。

取り組みの概要:地域資源を活かしたバイオマスタウン構想

小坂町では立地する小坂製錬が、鉱石からではなく都市鉱山資源から希少金属を取り出すリサイクル事業への転換が図られ、
周辺地域にリサイクル産業が集積しつつある。これに足並みを合わせつつ、町は 2005 年に資源循環型社会の構築を目指した
「小坂町バイオマスタウン構想」を公表し、「資源循環」と「農業振興」を両輪にした「菜の花プロジェクト」が行われている。
国内には数多くのバイオマスタウン計画があるが、小坂町の特徴は、資源リサイクルと農業振興を組み合わせた取り組みであ
ることだろう。
きっかけは平成 9 年に小坂町で開催された「世界鉱山サミット」である。このサミットには世界 30 ヶ国の鉱山関係者が参
加し、鉱山都市の今後について議論が交わされた。結果、環境を破壊してきたこれまでの鉱山開発のあり方を見直し、鉱山開
発によって培われた先端技術を世界規模での環境保全や資源有効活用と、地域の活性化に役立てていくことを記した『小坂宣
言』を採択。この中で「土に還るものは土に還し、土に還らないものは再資源化する」という理念が生まれた。これを契機に
小坂町の循環型社会の実現に向けた取り組みが加速することになり、平成 16 年度の「小坂町バイオマスタウン構想」の策定
に繋がった。
こうした理念の元に行われているのが「菜の花による循環型社会づくりプロジェクト」である。これは町内の生産調整によ
る転作田(水田 454ha のうち 147ha で生産調整がされている。そのうち 84ha については実質未活用状態)で菜の花を栽培
することで美しい景観をつくり、菜種油等の新しい特産品を創り出すことで農家の所得を向上させ、使用済み油を軽油に代わ
る燃料として町内の農家が活用する流れをつくることで資源循環型の町づくりを目指すという取り組みである。
当時の減反政策では「産地づくり交付金」を活用し、地域内で次のような独自の交付金制度(作付け生産調整 5,000 円
/10a に加え、景観作物作付けは上乗せ 15,000 円 /10a、菜種の出荷に対してさらに上乗せ 20,000 円 /10a など)を設けて転作
作物としての菜の花作付けを後押しした。さらに、生産した菜種は 100 円 /kg で町が買い取ることとし、全ての条件に該当
すると 10a あたり約 60,000 円の収入が農家に入ることになる。
こうして生産された菜種は乾燥調整後に出荷され、圧搾機を使用し
て搾油し、一番搾りだけを使った良質の菜種油「菜々の油」が生産さ
れている。一連の取組の背景には、バイオマスタウン構想策定委員と
して召集された 7 人の若手役場職員の存在があり、構想の策定に始
まり、農家への説明、商品開発、搾油施設の整備、運営会社の設立、
営業活動、販促活動等すべて行った。そして、構想策定から実施に至
るまでの特徴として、町長が強力なリーダーシップを発揮して牽引す
るとともに、策定委員の自由な発想を積極的に採用しているという点
も大きかった。
さらには、各家庭で使用された菜種油は廃食油として町内に設置さ
れたステーションで回収して加工し、バイオディーゼル燃料として農
機具等で利用、搾油段階で発生する菜種カスは有機肥料として畑で再
利用するなどのサイクルも徐々にではあるが確立されている。菜種油
の生産を担うのが、この事業のために設立した「株式会社エコサカ」
である。当初は町営だったが、設立 1 年で独立採算化し、現在は従
業員の出資による資本金 100 万円の会社である。菜の花の作付面積
は年々増加しており、平成 17 年には 17 戸(9ha)だったが、平成
21 年には 52 戸(30ha)にまで増加。収穫量も 18 トンにまでなった。
一方で、今後はいかに商品のブランド力を高めて販売を伸ばすかが課
題である。
バイオマスタウン構想におけるもう一つの大きな取り組みが「生ゴ
ミの堆肥化」である。それまでは町内から発生する生ゴミは隣接自
治体との広域行政組合による施設で焼却処分を行っていたが、平成 9
年から町内の養豚業者である「ポークランドグループ」が保有する糞
尿処理施設で堆肥化の試験運用を開始し、平成 17 年より本格的に実
施している。ここでつくられた堆肥は、再び地元農家に還元されると
いうサイクルになっている。また、使用済み菜種油のバイオ燃料化と
いうリサイクル工程も現在は同グループが行っている。このように、
町が強力なリーダーシップをもって牽引しながらも、町内の各種事業
者と良好な協力関係を構築しながら進めている点も大きな特徴であ
る。現在の生ゴミのリサイクル率は 55%程度で、将来的に 70-80%
の回収率を目標としている。
また、町全体を博物館にする「エコ・ミュージアム構想」による観
光客誘致にも力を入れている。町内に点在する鉱山時代の建築物を移
築して市街地に集合させ、産業遺産の建築物が並ぶレトロな街並みを
つくり「明治百年通り」と名付けた。その他にも鉱山の物資輸送に使
われていた廃線路等を活用した「小坂鉄道レールパーク」をオープン
させるなど、町全体を博物館のようにするエコ・ミュージアム構想を
進めている。一時は衰退した町だが、環境への取り組みと農業との連
携によって生まれた「菜種油」という新しい地域資源の開発と、「鉱
山の町」という古くからの地域資源の再構築という両輪による地域活性の挑戦は続く。

インタビュー:杉原 隆広 氏(観光産業課農林班/小坂町)

小坂町
観光産業課農林班
杉原 隆広 氏