小さな街に 200 万人を呼び込んだ「フラノマルシェ」(北海道富良野市)ふらのまちづくり株式会社|地域活性化100

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小さな街に 200 万人を呼び込んだ「フラノマルシェ」
ふらのまちづくり株式会社
北海道富良野市

北海道富良野市の地域の概要

北海道のほぼ中心にある富良野市。人口は約 24,000 人で主幹産業は、農業(タマネギ、ニンジンなど)であり、ワイン、
ブドウ果汁、チーズなどの特産品開発・製造にも力を入れている。特に「ふらのワイン」は全国でも珍しく「富良野市直
営のワイナリー」で製造されている。もう一つの主幹産業である観光業では、ラベンダー、スキー(富良野スキー場)や、
80 年代に放送が始まったドラマ「北の国から」の影響もあり年間 200 万人近くの観光客が訪れるが、近年では「北の国から」
を知らない世代も増えたため、これに続く観光資源の開発が課題になっている。一方で、ドラマロケ地を中心とした観光施
設の多くが郊外に立地しているため、中心市街地に訪れるのは年間 7 万人程度であり、商店街店舗の閉店や、郊外への大
型店出店に伴う中心市街地の空洞化は深刻さを増すばかりであった。それに追い討ちをかけたのが、平成 18 年、中心市街
地の核であった大型病院の移転であった。そうした事態を受け、従来の通過型観光だけでなく、観光客の中心市街地への呼
び込みを目指したのが「フラノマルシェ」であった。

取り組みの概要:小さな街に 200 万人を呼び込んだ「フラノマルシェ」

富良野市の中心市街地再生の取り組みの起点となったのは、平成 12 年に
策定された「富良野市中心市街地活性化基本計画」とそれに伴う駅前広場の
整備事業であった。当時、駅前再開発に伴う管理運営を目的として、中心市
街地活性化法 (1998 年 ) に基づく富良野市 TMO 構想)に伴って「ふらのま
ちづくり株式会社(旧会社)」が設立された。当時の会社は当初は商工会議
所や農協による出資のほかに、第三セクターを中心に 19 団体が 1035 万円
を出資し、市の出資率も 9.7%で公的セクターの性質が強いものであった。
当時の再開発計画は「観光客を呼び込める街」を目指して約 6 年をかけ
て行われたが、実際には予算削減等の影響でロータリー等の整備等に留まり
当初の構想は実現されなかった。当時、店主の高齢化や立ち退き補償金を受
けて廃業・移転をする商店街店舗が相次いだ。49 件のうち 26 件が外部移
転や廃業をした。これによって中心市街地の空き地・未利用地は増大し、街
中の居住人口の減少がさらに加速した。こうした事態にさらに追い討ちをか
けたのが、中心市街地の中核施設の一つであった地域の中核病院の移転で
あった。
これを受けて、商工会議所役員や商店経営者が中心となって「市街地活性
化協議会」を設立、「ルーバン・フラノ構想」という「フラノマルシェ」を
含んだ構想を立ち上げた。この実施主体としてすでに設立されていた「ふら
のまちづくり会社(旧会社)」の拡充が行われることになる。「駅前整備だけ
でなく、病院跡地の活用も含めた中心市街地再生」を広く市民に訴え、出
資を求めた。この結果、40 を超える地元企業や商工団体が出資に応じ、約
半年間で 7,315 万円が増資された。市は増資を行わず、民間企業の出資率
は 76.4%となり、会社の幹部も役員のうち 3 名が地域の民間企業経営者で、
公募により 5 名の正規職員を新たに雇用、パート 8 名を採用するなど、地
域の民間が主体となり、新たな「ふらのまちづくり株式会社(新会社)」と
して生まれ変わった。
こうした民間力の結集によって平成 22 年、病院跡地に中心市街
地活性化を目指した「フラノマルシェ」が生まれた。フラノマルシェ
は 6,600㎡の敷地中央にイベント広場(ミニコンサートやフリー
マーケット等を実施。市民・商業者・観光客の交流拠点となり賑わ
いを創出している)を備え、それを囲むように JA ふらの直営農産
物直売所「オガール」(地産地消による健康な食文化の発信拠点を
すると同時に農家や婦人層の生き甲斐を作り出し、富良野産野菜の
ブランドイメージの向上と高付加価値販売を目指す)、富良野物産
公社運営の特産物販売所「アルジャン」(富良野エリアで長い時間
をかけて作られてきた様々なお土産や特産品 2000 点以上が並ぶ)、
まちづくり会社と地元飲食店が協力して運営するスイーツカフェ
「サボール」の3棟が建つ。
フラノマルシェは、これまでの道の駅のような「通過型施設」で
はなく「滞留型施設」であることを目指しており、マルシェが核と
なって客を呼び込み、地域に波及させるための様々な仕組みがある。
まず、施設中央の広い「イベント広場」は訪れた人が、お茶を飲み
ながら中心市街地の情報をインプットする場所であると同時に、市
民が自由にイベントを開催できることで、観光客と市民との交流の
場にもなる。また、マルシェの中にはテイクアウト店舗はあるが、
本格的な飲食店はない。これはマルシェに来た客に商店街の既存飲
食店を利用してもらい共存するための仕組みだ。
当初掲げていた来場者数 30 万人 / 年の目標をはるかに越え、初
年度の来場者数は約 55 万人が来場、3 年目になる平成 24 年には
74 万 5000 人となり、売上は 5 億 1000 万円にまでなった。一時、
8 万人に満たなかった中心市街地への流入人口は 10 倍以上と試算
されており、富良野を訪れる観光客の多くがマルシェを訪れるよう
になった。この結果、地域全体への経済波及効果は 10 億円近くと
試算されており、また雇用効果として 98 人の地元雇用も生みだし
ている。さらに、メディア露出が増えたことにより、富良野の PR
になていることに加え、中心地市街地に「にぎわい」が戻ったこと
によって、商店主たちの意識にも変化が起こり始めていることは大
きな効果である。

インタビュー:西本 伸顕 氏(ふらのまちづくり株式会社 代表取締役社長 )「大事なことは「誰がやるか」だ。」

大事なことは「誰がやるか」だ。
西本 伸顕 氏
ふらのまちづくり株式会社 代表取締役社長
(各地域の)持っている地域資源はそれぞれに違う。資源をどう生かすかや組み合わせるかを考えることは大事だが、もっ
とも大事なことは「誰がやるか」だ。今の各地の衰退は気付いていてもやる人がいないことが原因になっていると思う。各
地にある商工会議所の有力企業は、地域への影響力、資金力も持っているのだから、そういう人たちが「地域のために俺た
ちが頑張る」という姿を若い人に見せる気概で頑張らなければ地域は良くならない。その際の主語はあくまでも「富良野(そ
れぞれの地域)」で、我田引水になってはいけない。「地域をどうするか」「地域をどうしたいのか」であるべき。
これまで、日本中に官依存体質があったのだと思う。まちづくりも地域をどうするかではなく補助金をどう引っ張ってく
るかにばかり頭を使っていたと思う。行政が本来やるべきことは「福祉」や「教育」などの民間による代替が難しく、民間
では採算がとりにくい公共サービスの分野だ。逆に採算が採れるものならば民間がやるべきだと思う。今の多くの地域では、
まだまだそういう資金もマインドもないが、「フラノマルシェ」のみならず、地域における先進的な事例を見ると多くの場
合は、民間が行政を動かして実現しているものが多いという事実はある。