観光も漁業もオール日間賀島で「フグとタコ」の島づくり(愛知県南知多町 日間賀島)日間賀島観光協会|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域に人を呼ぶ>地域資源を再発見し活用する
観光も漁業もオール日間賀島で「フグとタコ」の島づくり
日間賀島観光協会
愛知県南知多町 日間賀島

愛知県南知多町 日間賀島の地域の概要

日間賀島は本土から約 2km の海上にある周囲 6.6㎞の島で、全域が三河湾国定公園に指定されている。平成 22
年時点の人口は約 2,000 人(630 世帯)で、高齢者人口比率は 28.7%。
水産業と観光業が中心。漁業では島周辺が伊勢湾と三河湾にまたがった好漁場であるため、タコ、エビ、カニ、
カレイ、トラフグ等の漁が行われ、これらの加工業も行われている。近年は、アワビ、トラフグ等の種苗放流も行う。
ホテル・旅館・民宿などの観光業や水産加工業などを営む経営体のほとんどが日間賀島漁協の組合員となっており、
その中には季節的に漁業を行う人もいるため、島全体として約8割の世帯が何らかの形で漁業に従事している。
観光業に関しては、昭和 25 年頃から旅館・民宿が本格的に展開されるようになり、昭和 40 年代以降は団体客を
対象に料理中心の食事型観光業を提供、昭和 50 年代以降は魚食料理を中心とした周年営業が展開された。平成に
入ってからは「タコの島」「フグの島」「イルカに会える島」などのブランドを確立し、体験・観光漁業にもいち早
く取り組んだ。現在の観光客数は年間約 26 万人。今も島全体で観光産業に取り組んでいる。

取り組みの概要:観光も漁業もオール日間賀島で「フグとタコ」の島づくり

昭和 40 年代から観光地として栄えてきた日間賀島であったが、平成に入ってからは他の観光地との差別化に悩
んでいた。そうした中で注目したのが、島で大量に水揚げされ、島内で食材として活用されていた「タコ」だった。
当時の観光協会は島を「タコの島」として売り出すことを決めた。タコのキャラクターをつくり、島内宿泊施設の
食事にはタコの丸茹、タコ飯、タコ刺し、タコしゃぶしゃぶと「タコづくし料理」を用意した。他にも、タコグッ
ズを作成して売店に置き、島の玄関口である港に巨大なタコ・モニュメントを設置するなどして、徹底して「タコ
の島」にこだわり続けた。
しかし、「タコ」にこだわっただけでは、集客は簡単ではなかった。当時は PR についての知識がなかった観光
協会のメンバーらが中心となって、有名観光地への視察を行い、話し合いを重ねて PR の方法を模索した。その中
で「まず、食べてもらう」ことの重要性に気付いたメンバーは「一人でも多くの人にタコを食べてもらおう」と、
地を這うような地道な PR 活動を行う。「タコの島」への徹底したこだわりと、それを伝えるための地道な PR 活
動によって「タコの島」としてのブランドは徐々に確立されていくことになった。
結果、「タコの島」として観光客を集めるようになった日間賀島だが、海水浴とタコ料理を目当てにした観光のシー
ズンは春夏秋だけであり、海水浴が出来ない冬期にも観光客を呼び込んで、通年化した観光業を確立することが求
められた。
次に目玉となったのが「フグ」だった。日間賀島では昔からフグ延縄漁が盛んに行われており、冬期には高級魚
の「トラフグ」が大量に水揚げされていたものの多くはフグで有名な下関へ出荷されてしまっていた。そうした中、
転機となったのは平成元年。フグのメッカである下関周辺でフグが不漁となり、下関から日間賀島にフグを買いに
来る業者が殺到した。これがきっかけとなり、今度は「フグの島」を目指すことになる。
平成 7 年には「福(フグ)の島」を銘打ってフグを島の第二の名物として売り出す活動をはじめる。地域の鉄
道会社とタイアップをして、島に泊まってふぐを食べるという「フグづくしプラン」を商品化。名古屋市内などで
大々的に PR 活動を行った。同時に、島内のホテル、旅館、民宿等に対して、専門家によるフグ調理の講習会を開
催して、フグの調理資格を取得してもらい受け入れ態勢を整えた。開始当初は日間賀島で数軒しかなかったフグ料
理提供店が約 60 軒にまで増加した。
平成 9 年には「フグ祭り」を開催するまでになり、日間賀島に
タコに続く「フグ」という 2 本目の柱ができたのだった。閑散期だっ
た冬期にはトラフグ目当ての観光客が増え、現在は年間 14,000 件
の申し込みがあり、年間観光客数の約 4 割が冬期の観光客で占め
られるまでになっているという。
近年、日間賀島では海産物による観光振興以外にも、様々な取り
組みを行っている。例えば、日間賀島の自然環境を活用した様々な
体験プログラムを用意し、子供に楽しんでもらう「自然体験漁業」
である。
このプログラムでは、釣り体験、タコのつかみどり、地引き網体験、
底引き網体験、タコ料理づくり、干物づくりなど、様々なメニュー
が用意されており、漁業体験を通して自然環境の大切さなどを学ぶ
ことができる。他にも本土の知多半島にある水族館とタイアップし
て港に生簀(いけす)をつくり、子供達はイルカと触れ合うという
貴重な経験をすることができる。これらの取り組みは全て漁協や地
元漁師の協力で行われている。
「タコ」と「フグ」という地域特産品のブランド化と、自然体験
漁業プログラムで観光振興に成功した日間賀島だが、背景には地元
漁業者、観光業者、観光協会等の連携がある。タコについては、島
の漁師が獲ったタコの全量を漁協が買取り、全てを島内の観光業者
に供給する仕組みができており、「フグ」については島の漁協が運
営する市場を通じて取引されており、島の宿泊施設や飲食店で提供
されている。また、自然体験漁業プログラムについても、開始当初
は漁師の空き時間にボランティアで行われていたが、近年では利用
者の増加によって漁師にとっても副収入となっている。
こうした日間賀島の取り組みが成功を得た理由の一つに、利益を
島の一部だけで独占するのではなく、漁業者・漁協・観光業者・宿
泊業者など、島のマジョリティーである、主要産業関係者のすべて
にとって利益となる仕組みをつくり、それらが協力したことにある。
そして、この協力を自治体主導ではなく、漁業者と観光業者といっ
た民間主導で行われた点にある。現在も、観光協会と漁協や島の各
種団体の協力によるイベントが行われるなど、島を挙げての取り組
みが続いている。
日間賀島で行われた島を挙げての観光振興の取り組みは、観光に
とどまらず巡り巡って、古くから基幹産業として島を支えてきた漁
業にも好影響をもたらした。天候や自然に左右されるために安定し
ない漁業を、安定収入が得られる観光業が通年で支えることが可能
になり、子弟に漁業を継がせる漁師も多くなり、人口減少を抑制す
る効果も生んでいる。今後も、これまで作り上げてきた島の観光資
源を次世代に継承していくとともに、一度作り上げた「ブランド」
に安住することなく、時代の変化に応じて、次の価値を作っていく
ことも必要である。

インタビュー:鈴木 甚八 氏(会長/日間賀島観光協会)

日間賀島観光協会
会長
鈴木 甚八 氏