若手商店主たちによる「商店街再生」(熊本県阿蘇市)阿蘇一の宮門前町商店街 若きゃもん会|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域に人を呼ぶ>地域資源を再発見し活用する
若手商店主たちによる「商店街再生」
阿蘇一の宮門前町商店街 若きゃもん会
熊本県阿蘇市

熊本県阿蘇市の地域の概要

阿蘇市は平成 17 年に旧阿蘇郡の一の宮町・阿蘇町・波野村が合併して出来た。熊本市からは 50km ほど離れた九州山
地内にあり、平成 22 年時点の人口は約 28,000 人。市のほぼ全域が「阿蘇くじゅう国立公園」内に含まれており、周囲
100km を超える世界最大級のカルデラ、阿蘇岳を中心とした雄大な自然景観が広がっている。さらに市内には内牧温泉な
どの温泉や、全国に 450 の分社を持つ「阿蘇神社」などの観光資源にも恵まれている。この阿蘇神社から横に伸びる参道
にあるのが「阿蘇一の宮門前町商店街」である。200m ほどの道沿いに 40 件ほどの個人商店が立ち並んでいるが、横参道
という位置関係もあって、10 年ほど前までは神社への来訪者が商店街に流れていなかった。地元住民の利用もなく、店舗
の閉店も相次ぎ、店舗数は最盛期の半数の 20 軒程度まで減少していた。

取り組みの概要:若手商店主たちによる「商店街再生」

商店街再生の中心となったのは平成 13 年に結成された若い商店街店主数人のグループ『若きゃもん会』である。
門前町商店街は、昭和 50 年頃までは賑わいを見せていたが、平成 10 年頃になると、郊外への大型店の進出等の
影響を受けて急激に衰退した。平成 12 年には地元新聞の「消えゆく灯」という特集記事の中で「閑散とした一の
宮町商店街」が掲載され、これに危機感を持った一部の若手商店主ら 10 人によって商店街の再興を目指す「若きゃ
もん会」が発足した。
最初に行ったのが、当時は工夫もなく毎年漫然と行われていた商店街イベント「夜市」の見直しだった。資金が
ない中で出し物等を工夫しすることで 1,000 人以上を集めた。しかし、イベント時だけの集客では商店街そのも
のの再興にはつながらず、平成 15 年頃からは観光客を呼び込むために専門家を交えた勉強会を開始した。まずは
「客に商店街で 30 分間滞在してもらう仕組み」をつくるために「食」をキーワードにして、各店舗が想いの込もっ
た独自商品をつくることとなった。これに参加したのが、若きゃもん会の代表である杉本氏の精肉店、郷土料理店、
洋菓子店の 3 店舗で、精肉店では熊本の特産物である馬肉を使ったコロッケ「馬ロッケ」を開発。注文を受けて
から揚げ、その時間に積極的に客とふれあうという方法にもこだわった。このほかに郷土料理店では阿蘇産の素材
を活用した「田舎いなり」を、洋菓子店では阿蘇の湧水を使ったクリームが詰まったシュークリーム「たのシュー」
を作った。これらの商品は店舗内で食べるほかに、食べ歩きも出来ることも出来ることが特徴で、食べ歩きをしな
がら商店街を散策するという流れを生み出した。個々の店舗が得意分野を生かし、他にはない商品を開発するとい
う小さな取り組みの積み重ねによって「滞在時間 30 分」を達成。その結果、そこに「行かなければ食べられない
ものがある商店街」として各種メディアに取り上げられた。
この 3 店による商品開発をきっかけとして、今では食に限らず商店街のそれぞれの店舗がこだわりの一品を開
発している。例えば、薬屋では店主の趣味から始めたスモークベーコンづくりを活かして「薬屋の安心品質ベーコ
ン」を、雑貨店では水で浮き上がるおみくじを、豆腐店は美しい水を使った豆腐、阿蘇の湧水を利用したラーメン
店などがある。こうして各店舗が競い合うように特徴的な商品開発をしていることが、商店街全体をさらに押し上
げている。一の宮商店街ではこうした個々の店舗による取り組みに加え、「食を楽しむ空間」にも工夫を行っている。
精肉店では、店舗の横に囲炉裏がある古民家風の休憩室を設けており、ゆっくりと揚げたての「馬ロッケ」を食べ
られる。他にも、各店舗前の木陰にベンチを置くなど、客が商店街をゆっくりと楽しむことができる空間が作られ
ている。こうした空間づくりは近年から始まったものばかりではなく、現在の「若きゃもん会」世代の先代の頃か
ら徐々に整備されてきたものでもある。
先代たちが最初に取り組まれたのが「水基」の整備である。この地域では至る所から豊富な湧水が出るため、か
つてから飲料水や生活用水に利用されてきた。この水という地域資源を活かすため、平成 4 年頃から商店の店先
に 20 か所ほどの「水基」という水飲み場を設置した。この水基
には、それぞれに店にちなんだユニークな名前が付けられてい
る。また、商店街の角地、店舗前、空き地などに桜の木が植えら
れており、緑が多いのもこの商店街の特徴である。これらは平成
13 年頃から商店街の景観整備を目的に植樹されたもので、植樹
費用には当時の町からの補助のほかに、先代の父親世代によって
賄われたという。さらに、商店街全体の景観を統一するために一
の宮商店街では情報発信や見せ方の工夫にも力を入れている。平
成 13 年には TMO「株式会社まちづくり阿蘇一の宮」によって
豊富なイラストで各店舗が開発した「こだわりの一品」を紹介し
た地図「門前町のうまかもんと水基巡り」を作成し、現在もこの
地図を手に商店街を巡る観光客の姿が多く見られる。
近年では商店街にさらに人を呼び込むための各種イベントも行
う。平成 21 年からは商店街の桜の木を活かして「お座敷商店街」
というイベントを実施。商店街の通りの真ん中に 200 枚を超え
る畳を敷き、花見を楽しむという斬新な取り組みだ。他にも平成
23 年からは年 2 回開催している骨董市「旅する蚤の市。in 阿蘇」
には 30,000 人以上が訪れる。
こうした取り組みにより、10 年前は 20 軒程度にまで減少し
ていた店舗数だが、ここ数年で外部からの移入などによって 10
軒以上の新規出店があり空き店舗の問題は解決された。ただ、商
店街への出店には制約を設けており、目指している商店街の姿を
壊さないように配慮している。単に店を受け入れるのではなく、
その業態が商店街にとって必要であるか、店主に想いや情熱があ
り地域に馴染むことができる人間性を持っているかなどを厳しく
見ているという。
一の宮商店街の再生によって、商店街のみならず隣接する阿蘇
神社への来訪者数も平成 13 年頃までは年間 30 万人前後で推移
していたが、現在は年間約 50 万人となり、若者の来訪も増加した。
さらには多くの人が訪れ、注目をされるようになったことで、そ
れぞれの店舗が自主的に商店街の雰囲気を壊さないための工夫を
外観に施したり、商店街周辺の一般住宅でも軒先に花を飾るよう
になったりと、商店街の店主たちや周辺住民の意識に変化が見ら
れるようになったことは大きな成果である。これまでは「若きゃ
もん会」のメンバーを中心とした一部の熱意ある人々が商店街を
牽引してきた。しかし、今後は理念や想いを商店街の出来る限り
多くの人で共有し、商店街の取り組みを収益元とした「独立採算
のとれる事務局組織」をつくることによって、商店街活性化の取
り組みを長く続いていく「仕組み」にしていくことを目指す。

インタビュー:杉本 真也 氏(若きゃもん会/阿蘇一の宮門前町商店街)

阿蘇一の宮門前町商店街
若きゃもん会
杉本 真也 氏