行政の枠を超えた連携で「ほんもの」体験を観光資源に(長野県飯田市ほか)株式会社南信州観光公社|地域活性化100

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行政の枠を超えた連携で「ほんもの」体験を観光資源に
株式会社南信州観光公社
長野県飯田市ほか

長野県飯田市ほかの地域の概要

南信州地域は長野県の最南端に位置し、飯田市を中心とした1市3町10村で構成されている。東に南アルプス、
西に中央アルプスがあり、南北に天竜川が貫く巨大な谷地形の中にある。豊かな自然と優れた景観を有し、長野の
中では比較的温暖な気候で雪も少ない。かつては養蚕などの産業が発展し、現在では精密機械の製造工場等が多い。
農業では市田柿、りんご、なしなど、果物を中心とする農業などが盛ん。近年では豊かな自然を生かした体験教育
旅行や、グリーンツーリズム・エコツーリズムの取り組みなどで全国から注目を集める。

取り組みの概要:行政の枠を超えた連携で「ほんもの」体験を観光資源に

取り組みのきっかけは、平成8年。飯田市が中心となって「ほんもの体験」や「体験教育」をコンセプトとし
た観光事業を始めたことにある。
観光資源に乏しい地域の観光を振興するためには、地域の自然や営みを生かすことが重要であると考え、地域を
熟知した住民たちが案内やインストラクターを努め、地域の家に泊まるなどの「体験型観光」に取り組んだことだっ
た。当初は必ずしも順調だったわけではなく、飯田市の職員を中心として、体験型観光に協力してくれる受入地域
のとりまとめや、旅行会社へのプロモーション、各地の学校等へのPRなど必死の営業活動を行った。こうした努
力が実を結び、徐々に事業が軌道に乗り始めた。規模の拡大によって飯田市だけで取り組みを行うことが困難になっ
たことから、周辺自治体のうち興味を持った自治体が任意参加する形で取り組みを拡大した。
平成13年、飯田市を中心とする周辺5市村の飯田市(旧上村・南信濃村は設立時は不参加)・阿智村(阿智村観
光協会)・浪合村(現在は阿智村)松川町・高森町・阿南町・喬木村(特定非営利活動法人たかぎ)・平谷村・豊丘村(NPO
法人だいち)・根羽村・泰阜村・天龍村・清内路村・下條村・売木村・大鹿村)が連携し、さらに農協、交通会社、
メディアなど10社の地元企業・団体の出資による第3セクターとして「株式会社南信州観光公社(以下、公社)」
を設立した(平成16年までに下伊那郡の残り13町村も順次出資参加)。全国でも類を見ない広域の市町村による
連携である。
これら多様な主体が協力するにあたっては、出資に加え、事業協力という形でも事業に参加してもらうなど、そ
れぞれにできることをできる形で協力してもらうように。柔軟な参加体制とした。
公社では、地域住民と訪れた人が地域の自然や歴史を共に楽しむ体験を通して、交流を生むことを理念としてお
り、これを「ほんもの体験」として、数々の「ほんもの」にこだわった体験を提供している。
公社の魅力はなんといっても、多彩なプログラムである。「感動体験南信州」と名付けられたプログラムは、現
在では多種多様な180種類以上にもなっており、アウトドア(キャンプや乗馬体験)、食文化体験(そば打ちなど)、
農作業体験(田植え、りんご狩り)、伝統工芸(陶芸など)、環境学習(自然観察)など多岐にわたる。これらを組
み合わせて楽しむこともできる。
代表的なプログラムとしては、地元農家や主婦たちのグループが実施する「そば打ち体験」や「五平餅作り体験」、
酪農家との協力による酪農体験、地域の会社と協力したラフティングなどの活動があり、毎年、数件の新プログラ
ムが生まれている。こうしたプログラムは地域での日常や、地域の人の声、体験参加者の声などからアイデアが生
まれており、地域の農家や商工業者、地域住民との親密な
関係を持つ公社だからこそ可能な活動である。
体験観光の受け入れ体制も、年々整備が進んでいる。公
社が設立された平成13年には、民泊受け入れ農家は約
70軒だったが、現在では修学旅行等の受け入れ増加に従っ
て、受け入れ協力農家も増加。約400軒を超える農家が
民泊を受け入れるまでになった。
近年は特に修学旅行などの教育旅行の受け入れを核とし
た事業展開を行っており、公社の強みである体験観光に集
中して取り組んでいる。近年の教育旅行の受け入れは年間
5万人を超える。
教育旅行の受け入れでは、公社から教育旅行のプランを
提案し、学校と旅行会社と公社が協力して旅程を作成する。
公社が開発・提供をしている体験型旅行を実行するために
は、地域外の旅行会社と連携が欠かせない。公社のスタッ
フは限られているため、営業活動や客との調整等を旅行会
社が行うことで、少ない人員でこれだけのプログラムの企
画運営と、実施が可能になっている。限られた人員で事業
を行うために積極的に外部と連携することも重要である。
もう一つ、近年増加しているのが「公社」自体への視察
旅行である。観光資源となり得るような「地域資源」をつ
くりだすことに悩んでいる地域は多く、公社が取り組んで
きた体験観光づくりの取り組みに対して、多くの自治体や
団体からの視察申し込みがある。公社ではこうした「視察・
研修」の要望に対して、各種コースを用意して積極的に受
け入れを行っている。内容としては「Aコース:飯田市の
体験教育旅行誘致事業から公社設立の経緯及び現在の受入
状況についての研修会」「Bコース:公社設立までの経緯、
現在の受入状況についての研修会、体験プログラム受入先
代表者との意見交換会」など、プログラム化された視察コー
スを用意している。講演や座学などの視察だけではなく、
体験観光を行っている現場に行き、地域住民と意見交換を
行うなどの充実したプログラムを提供している。
公社の取り組みによって、これまで地域に大きな収益を
もたらしているが、公社では、平成13年の設立当時から、
収入の約95%は体験観光プログラムの提供等の旅行業に
よるもので、行政からの委託業務などもほとんどなく、補
助金も受けていない。今後についても、「ほんもの体験を
提供する」という理念に基づいて魅力的な体験プログラム
の開発と提供に集中するとしている。

インタビュー:高橋充氏(代表取締役社長/株式会社南信州観光公社)

株式会社南信州観光公社
代表取締役社長
高橋充氏