ブームに惑わず。地域の若者による温故知新のまちづくり(兵庫県朝来市)竹田劇場ほか|地域活性化100

地域活性化の先進的取組事例>地域に人を呼ぶ>地域資源を再発見し活用する
ブームに惑わず。地域の若者による温故知新のまちづくり
竹田劇場ほか
兵庫県朝来市

兵庫県朝来市の地域の概要

朝来市は、平成17年に朝来郡生野町、和田山町、山東町、朝来町の四町が合併して朝来市となった。人口は昭和30年
には39,500人であったが、平成17年の約34,800人から平成22年に32,800人と近年に特に減少が進んでいる。兵庫県
のほぼ中央部に位置しており、京阪神地区からは鉄道や高速道路を利用してて2時間程度の距離であり、姫路市までも1
時間程度である。また、近年北近畿豊岡自動車道が開通したことで交通の便は良くなっている。中国山地にあり山間部が多
いため、寒暖の差が大きく冬は豪雪に見舞われる。
近年、市内にある城跡「竹田城跡」があり、かねてより時代劇映画の撮影等に利用されていた。竹田城址は標高354m
の山の山頂に築かれており、一定の条件が揃うと城跡がまるで川霧の雲海に浮かんでいるように見えることから「天空の城」
「日本のマチュピチュ」とよばれている。建築物は残存しないが、石垣がほぼそのままの姿で残されている。平成17年の
来客数は年間33,000人ほどだったが、メディア等で紹介されたことをきっかけに急増し、平成24年には238,000人とな
り、遺跡の保護等の観点から車の通行止めや、入場料を徴収するなどの対策に追われるようになり、その様子も度々話題に
なった。現在、市では「竹田城課」を設置して対応をしている。竹田城ばかりが注目されている朝来市であるが、他にも多
くの古代遺産や生野銀山などの遺産などもある。この竹田地区もかつては家具作りの町として栄えたという歴史もある。取
り組みの舞台である朝来市竹田地区は、竹田城の築城と共に発展した城下町で、江戸時代以降は宿場町として栄えた。今も
なお、宿場町としての佇まいを残している。兵庫県の景観形成地区にも指定されている。

取り組みの概要:ブームに惑わず。地域の若者による温故知新のまちづくり

近年は竹田城目当ての観光客で賑わう朝来市・竹田地区だが、地域では、いつか終わる可能性がある竹田城「ブー
ム」に対する冷静な見方をし、ブームに乗るのではなく、根底からの地域づくりに取り組んでいる20代〜30代
の若者たちがいる。現在、この地区や朝来市には地域伝統文化の継承から、新たなイベント等の創出まで、小さく
とも想いの強い様々な団体が地域おこしを行っており、一部の若者がこれらに共通して参加することで連携した街
づくりがなされている。例えば、主だったものでも朝来フィルムコミッション事務局、ASAGO国際音楽祭ファン
クラブ実行委員会事務局、あさご茅葺き保存会事務局、竹田塗保存研究会、クラフトマンショウ実行委員会事務局、
地域の伝承伝記を掘り起こす会(仮称)などがあり、取り組みは多岐に渡る。
かつては宿場町として栄えた市街地地区。竹田駅を中心とした600mほどの旧道沿いに店舗が並び商店街を形
成していたが、現在は空き店舗が目立つようになっている。現在も残ってはいるが、かつて、この周辺では家具作
りが盛んで多くの工房があったという。この旧市街地の再生の取り組みでは、地域を「クラフトマンゾーン(家具
作りのまち)」「トレイズマンゾーン(商人のまち)」「観光開発ゾーン(観光客を迎えるエリア)」に分けてのまち
づくりを考えている。
「クラフトマンゾーン」には、かつて家具の町として栄えた頃の竹田木工団地跡や、作業所付住宅が残っている。
昭和期には木工団地の大きな工場から、婚礼家具を積んだトラックが出入りしており、大きな工場だけでなく、住
宅の座敷等を改造した小さな住宅内の工場で下請けの仕事(家内制手工業)が行われていた。最盛期には30軒を
超える住宅工場があったという。これらの「産業遺産」を再活用することで、再び家具をはじめとしたクラフトマ
ンの工房が立ち並ぶものづくりの町を目指す。これまでには、このエリアにある旧竹田保育所の建物をクラフトマ
ンたちが建物をシェアして利用出来るものづくり工房(シェアファクトリー)として活用し、低家賃設定によって
若い作家が利用できるようにすることを目指している。同時に、作家の作品や取り組みを対外的に情報発信する機
会として、「クラフトマンショウ」などのイベントを開催。作業場の開放を計画し、随時見学も行っている。ほか
にも街中の廃工場を購入して、3Dプリンター・3Dスキャナー・小型CNC他の加工機械等を導入した商品開発
の為の試作品が作成できる「シェアファクトリー」も計画中して
いる。
職人たちを呼び、育てると同時に行うのが、情報発信力やデザ
イン力を持つ人材の確保である。職人には情報発信や広報等のデ
ザインが苦手な人が多いため、クリエイター、コンサルタント、
IT技術者等を積極的に誘致することで、職人が作った家具を魅
力的に発信していくことができる体制作りも行っている。
「トレイズマンゾーン(商人のまち)」では、空き店舗が目立つ
商店街を、小売り商人の町として再生する取り組みを行っている。
そのアンテナショップとしての役割を果たすべく、地域の若者た
ちによって運営されているのが「竹田劇場」である。旧道沿いの
商店街の中にある昭和41年築の建物を利用しており、景観保護
指定のある町の中において、あえて江戸・明治・大正の外観につ
くりかえることはせず、建物が作られた年代に合わせて昭和後期
以降の文化・意匠にこだわっている。竹田劇場という名の通り、
田舎にはほとんどない娯楽文化(映画・演劇・音楽等)の発信を
行い、町の人が毎週でも通いたくなるような文化の場を目指して
いる。また、このスペースは様々な活動をする他グループとの連
携の場にもなっている。
さらに、竹田劇場の2階には「チャレンジショップ」がある。
これは店舗の個人経営をしたいという夢を持っているが資金がな
い若者に対して、都市部等で店舗を開くよりも格段に安い賃料で
店舗スペースを貸し出し、個人経営者としての独立を応援するた
めの空間である。環境は良くても仕事がないという田舎の課題を
解決する一つの方法として、小さいながらも自分の店を持って商
売を行うことが可能になっており、外部からの若年層の移住増加
に貢献している。現在は、花屋、北欧雑貨店、米国雑貨店、建築
デザイン事務所、ペットトリミングショップ、家具木工工房が入
居しており、このうちの数店舗は「チャレンジショップ」と呼ば
れており低賃料で入居する代わりに一定期間に商売を成立させ
て、市内の空き家等を活用して独立することが求められている。
他にも、地域の伝統文化の再生によって、地域資源を発掘する
取り組みも行われている。あさご茅葺き保存会では、地元の有志
が集まり、荒れ放題になっていた江戸時代に建てられた茅葺き屋
根民家「朝来歴史民俗資料館(県指定文化財)」を再生する取り
組みを行う。京都から今では数少なくなった茅葺職人を呼び、茅
場の調査から、茅の刈り取り、屋根の葺き替えなどを行うことで
茅葺文化の継承と掘り起こしを行う。
また、竹田にはかつて「竹田塗」という漆器があったが、現在
では廃れてしまっていた。これを研究・保存する活動や、地域に
伝わる民話伝記を研究し伝承する活動(地元の伝承伝記を掘り起
こす会)、発掘した伝統文化遺産をマップ、パンフレット、絵本、
紙芝居等にして総合的に情報発信していく取り組み等が行われて
いる。さらにはこうした事業を、国や県の各種事業を積極的に利
用して推進していることもこの地域の特徴である。
それぞれの活動はまだ途上にあるが、竹田城という人気観光地
を持ちながらも、地域に住む若者たちが地域の伝統や文化を丁寧
に掘り起こしながら、一時のブームではない継続性のある町おこ
しに取り組む姿に、今後への期待が高まる。

インタビュー:松本智翔氏(竹田劇場ほか)

竹田劇場ほか